大和建造のDNA受け継ぐ 前畑造船

佐世保から世界へ 工業会企業の「技術力」・4

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 革新的な技術に挑戦していく。そんな“DNA”は受け継がれている。
 創業者の芳井一夫氏は、日本海軍の戦艦「大和」の作業主任(現場の最高責任者)を務めた。大和は波の抵抗を減らし燃費を向上させるバルバス・バウ(球状船首)を導入。ブロックに分けて製造する工法や当時はまだ珍しかった溶接を用いて効率化、軽量化を図るなど最新技術を駆使した。
 しかし巨大戦艦は最後、「水上特攻」のため乗組員の悲壮な決意を乗せ、沖縄に向けて出撃。1945(昭和20)年4月7日、約3千人の命とともに沈んだ。芳井氏はこの5日後、特攻で息子を亡くす。失意の日々を過ごしていたが48年、かつての部下に誘われ会社を興した。7月2日で70年を迎える。
 「大和は造船に携わる者にとって憧れだ」。田頭愼一社長(68)が言うように、その技術は幅広く応用されている。工場で従業員がガスバーナーで鋼板を焼いて膨張させ、水で冷やして曲げていく。ミリ単位の精度が求められる「撓鉄(ぎょうてつ)」と呼ばれる作業。9月に進水する旅客フェリーのバルバス・バウの一部となる。

ガスバーナーで鋼板を焼いて膨張させ、水で冷やして曲げていく作業=佐世保市干尽町、前畑造船

 自衛艦船やタンカー、貨物船、旅客船など100トンから1千トンの船を中心に手掛ける。世界的な価格競争にさらされる造船業界。田頭社長は「オーダーメードで建造できるのが強み。多少高額でも付加価値で勝負したい」と語る。
 近年はディーゼルエンジンでおこした電力を活用してモーターでスクリューを回す「電気推進船」に力を入れる。省エネや振動の低減、エンジンの小型化に伴う貨物スペースの増加といったメリットがある。これまでに白油タンカー(2007年)やLPGタンカー(10年)に国内で初めて導入。国内最多の実績を誇る。14年11月に建造した九十九島の遊覧船「みらい」は遊覧船として初めて採用した。コスト高など課題は残るが「将来はリチウムイオン二次電池や水素を使った燃料電池で航行させたい」。田頭社長は夢を語る。
 5月下旬。観光客らを乗せた「みらい」は九十九島に向け静かに滑りだした。海風に乗って、子どもたちの笑い声が聞こえてきた。

艤装(ぎそう)作業が進められるケミカルタンカー

◎前畑造船
 佐世保市干尽町。芳井一夫氏が1948年7月に創業した。代表取締役社長は田頭愼一氏で5代目。従業員数は72人(5月現在)。主な取引先は防衛省、日本ガスライン、田渕海運、西日本鉄道、させぼパール・シーなど。