私がSNSをしない理由

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SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)と呼ばれるネット上の交流サイトが全盛のご時世、私はフェイスブックもツイッターもインスタグラムも一切やっていない。

LINE(ライン)はようやく始めた。しかし現時点で相手は妻だけなので、ソーシャル(社会的)と言っていいのか疑わしい。

もちろん最新のテクノロジーについていけないのが一因だが、真の理由は別のところにある。それについては最後に説明したい。

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先週話題を呼んだのは、10月の青森市議選で当選したばかりの無所属新人(28)が、短文投稿サイトのツイッターで差別的な表現を含む投稿を重ねていたことが分かり、謝罪に追い込まれた一件であった。

この人物は、匿名のアカウントで「片腕落として障害者雇用」「おかまの物乞い」「年金暮らしジジイを舐めすぎ」などと書き込んだ。性犯罪に関し、風俗店に行けば良かった、という趣旨の投稿もしていた。

選挙後に一連の投稿が明るみに出て、記者会見を開き「誠に申し訳ありませんでした」と、ひたすら頭を下げた。残念なのは、投票後にこの問題が発覚したことだ。投票前なら、この人物に政治家としての資質があるのか、有効な判断材料になったはずだからだ。まあ、次回の選挙まで覚えておけばいいのだが。

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SNSで政治家が変な言葉を発して追及されるのは珍しい出来事ではない。

今年4月、財務事務次官のセクハラ問題を巡り、自民党議員がツイッターに野党の女性議員らがセクハラ撲滅を訴えている写真を添付した上で「私にとって、セクハラとは縁遠い人々」と揶揄(やゆ)する投稿をした。「その発言こそセクハラ」と批判を受け、自民党議員は投稿を削除し謝罪した。

こうした現象を受けて、ネット上ではSNSを「バカ発見器」と評する向きもある。SNSでの不用意な発言にこそ本当の人格がにじみ出る。「バカ」は言い過ぎにしろ、投稿者のお粗末な人権感覚をさらけ出す、という意味で「発見器」とは言い得て妙である。

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さて、ここまで書けば、私がSNSをしない理由がお分かりだろう。そう、バカがばれるからだ。

私は新聞に社説などを書いて暮らしている人間だ。それが実はあまり物を知らず、軽率な性格-要するにバカ-ということが世間にばれると、非常にまずい。

私が感心したりあきれたりするのは、SNSをやっている政治家や著名人たちが「どうして、よく吟味もしない自分の意見を、あれほど瞬発的に発信できるのか」という点だ。世間で事件が起きると専門家でもない人たちがすぐSNSで何か言う、あの風潮である。

私の場合、完全とはいかないまでもそれなりに調べ、頭を一生懸命ひねって考えを練り上げ、ようやく読者にお見せする文章にしている。私の吟味しない見解やパッと浮かんだ意見など何の価値もない。私は愚か者だが、それが分かるくらいの賢さはある。

政治家の発言は「レスポンス芸」などではない。「気の利いたことを言えばいい」などと勘違いしてはいないか。そこを見極めるのに、SNSは確かに便利なツールなのである。

(論説副委員長)

=2018/11/10付 西日本新聞朝刊=