制御装置を農・漁業、環境分野に 宮本電機 佐世保から世界へ 工業会企業の「技術力」・6

 「ロボットなどの自動化は、鉄腕アトム型ではなく、(機動戦士)ガンダムのようなシステムが求められている」
 代表取締役社長の宮本憲氏(71)は、人間と機械の“未来”をこう例える。
 いずれも近未来を舞台にしたロボットアニメの金字塔だ。ただ、アトムは自ら考え、話し、行動するが、ガンダムは人が操縦をしてその意思や感情を形にしていく点で大きく異なる。
 「ものづくり」の生産ラインが各工程に分かれ、人間が管理していた1979年に宮本社長が設立した。家電や自動車の生産ラインを自動化するFA(ファクトリーオートメーション)システムを開発・設計。省力化や生産性の向上を図ってきた。

組み立てが進むガラス製造ラインの動力制御盤=佐世保市三川内新町、宮本電機

 来年で設立40年を迎える。制御システムの設計から製造、電気配線工事、試運転調整までを一貫して担う総合制御システムメーカーに成長。FAシステムに加え、農業や漁業に進出している。2010年には無農薬でレタスなどを栽培する植物工場(人工光型植物生産システム)を完成。17年には高輝度LED集魚灯を開発した。
 エネルギー・環境分野にも目を向ける。大村市の萱瀬ダムの高低差を利用し、坂口浄水場に県内で初めて小水力発電所の制御システムを導入。4月に運転を始めた。二酸化炭素(CO2)排出量の削減が期待される。
 海外展開にも意欲的で11年に中国・上海市に現地企業と合弁会社を設立した。「これからは中国も労働人口が減っていく」。宮本社長は展望を描く。
 自動化・省力化の波は、インフラや店舗、病院など生活のあらゆる分野に及んでいる。一方で「人工知能(AI)はやがて人間の仕事を奪う」と危惧する声もある。宮本社長は「マニュアル化できないこまやかな気遣いや、自然環境の変化に応じたとっさの判断など機械にできないことはある」と強調。「機械は高齢化・障害などに伴い人間の弱った五感、腕力などを補えばいい。これこそ究極の制御技術だ」と断言する。
 「対立」ではなく「協調」へ-。それは、人間の可能性と、さらなる進化を信じることでもある。

高輝度LEDを使った集魚灯システム

◎宮本電機
 佐世保市三川内新町。1979年7月に宮本憲氏が設立した。本社のほか熊本支店と北九州支店がある。従業員は90人(6月現在)。関連会社は宮本商貿有限公司(上海)など。主な取引先は官公庁や平田機工、安川電機など。

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