大切なのは量ではなく内容 渡辺浩氏

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◆防災情報

今年も豪雨に台風に地震と大きな災害が続いた。防災対策が進んでもなお災害は起こる。万一の災害に遭遇した時にも私たちは適切に行動したいものである。その基本となるのが情報である。近年では、観測技術の進歩により災害情報の質は格段に向上し、通信技術によって即座に伝わるようになった。すると、問題はこれらの情報が生かされるかどうかである。

これだけの災害が続いてもなお市民の防災意識は低いと言われている。が、筆者は一概にそうではないと感じている。例えば「避難勧告対象のわずか数%しか避難しなかった」という報道をしばしば耳にするが、これは避難所に行った人の数に基づいたものであり、他の安全な場所に避難した人の数は当然ながら反映されていない。市民の意識が低いとしても、おしりをたたけば改善できるものでもない。

より多くの情報を与えたら改善できるとも限らない。問題は意識ではなく判断力だからである。そう考えると○○警報、○○情報に避難勧告・指示、と専門家でなければ詳細な違いを説明できないような情報が多い。個々の市民が置かれている状況ごとの判断は個々に委ねるしかないが、現状では与えられた情報を専門家のように解釈し総合的に判断することから市民は求められている。これは酷である。

質のよい情報が即座に伝わる今の時代にこだわるべきは、情報の量ではなく内容である。災害情報についても、伝わらないからさらに出すのではなく、出し方を一から考え直す時期に来ているのではないか。例えば「避難勧告」の意味が伝わらないと言うが、これは法律の条文をそのまま用いた用語であり主語は市民ではない。市民にとっては、受動的な表現を使って伝えられていることも切迫感が伝わらない一因であると考えている。

近年では、防災施設等の整備により災害の発生回数そのものは以前よりも大きく減った。しかしながらその能力を超えるような巨大災害は減ってはいない。日本の位置や国土の成り立ちから、今後も災害から逃れることはできないであろう。専門家もメディアも、もちろん市民も災害を無くしたい減らしたいという気持ちは同じである。今、伝える側と伝えられる側が上下の関係ではなく水平な関係となることが必要とされている。

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渡辺 浩(わたなべ・ひろし)福岡大工学部社会デザイン工学科教授博士(工学)。熊本大大学院工学研究科修士課程修了。被災地調査と地域活動の実践を通じて、市民目線の防災活動推進のための研究に取り組んでいる。

=2018/11/11付 西日本新聞朝刊=