『琉球 奪われた骨』 「研究」が踏みにじる尊厳

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 本書は、研究者による琉球人遺骨持ち去りの歴史的本質を論じた重要な著作である。

 19世紀以来、欧米の研究者が世界中で先住民族の墓を掘り、遺骨を持ち去った。頭骨のサイズを測り「人種」の優劣を明らかにしようとしたのである。江戸時代末期には、英国人によるアイヌ墓地盗掘もあった。

 明治時代になると日本人学者が墓掘りを始めた。帝国大学医科大学(現東京大学医学部)の小金井良精や京都帝国大学の清野謙次である。また北海道大学は現在1千以上のアイヌ遺骨を保管している。

 琉球では、1929年1月、清野の流れを汲(く)む金関丈夫が今帰仁村の百按司(むむじゃな)墓から琉球人遺骨を持ち去った。その後、奄美大島、喜界島、徳之島などからも数多くの遺骨が掘り出された。

 墓地は死者をとむらう神聖な場であり、遺骨は人びとにとって特別な存在である。しかし、研究者たちには単なる資料にすぎなかった。人々の意向とは別に遺骨は研究に供され続けた。

 その背後には近代国家による植民地統治がある。研究者たちは持ち帰った遺骨を計測して、あるときは「日本人」の優越を論じ、またあるときは日琉同祖論の根拠とした。研究が日本の琉球支配に便乗していた。

 近年、世界の先住民族は祖先の遺骨の返還を求めて立ちあがっている。2007年に国連で先住民族の権利宣言が採択され、遺骨への権利が明記された。アイヌ民族も、わずかとはいえ遺骨の再埋葬を実現した。

 遺骨を取りもどし自分たちのやり方で死者をとむらうことは、民族の自己決定への第一歩である。遺骨返還は人々が尊厳を取りもどすための運動と言える。

 しかし、「学知の植民地主義」は終わっていない。琉球人遺骨について問い合わせた著者に対して、保管する京都大学は一切の回答をこばんだ。「研究」がいまも人々の気持ちを踏みにじっている。

 伝わってくるのは、琉球人として、遺骨の返還と民族の自律を願う著者の切実な思いにほかならない。

(植木哲也・苫小牧駒澤大学)

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 まつしま・やすかつ 1963年、石垣島生まれ。那覇高校、早稲田大学卒業後、同大大学院博士課程単位取得。経済学博士。現在、龍谷大学経済学部教授。 
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