【MLB】イチローと.350超の首位打者争い 引退のマウアーは21世紀を代表する名捕手

引退を表明したツインズのジョー・マウアー【写真:Getty Images】

捕手としても3年連続ゴールドグラブ賞、2007年には盗塁阻止率.533

 全盛期のイチローと首位打者争いを演じたミネソタ・ツインズのジョー・マウアーが引退を表明した。

 マウアーは1983年4月19日、ツインズの地元ミネソタ州のセントポールに生まれる。祖父のジョンは、1940年代に遊撃手としてマイナーリーグでプレー。マウアーは高校時代はアメリカン・フットボールやバスケットボールでも大活躍し、全米に知られるアスリートとなる。野球でも台湾でのU18ワールドカップにアメリカ代表で出場、アメリカ優勝に貢献した。俊敏な捕手であり、当時から打撃のセンスはずば抜けていた。

 マウアーはアメリカン・フットボールの奨学金を得てフロリダ州立大への進学が決まっていたが、地元ミネソタ・ツインズが2001年6月のアマチュアドラフトでマウアーを全体1位で指名。プロ入りした。ドラフト同期にはマーク・テシェイラ(レンジャーズ)やデビッド・ライト(メッツ)などがいる。

 マイナーリーグのすべてのレベルで3割を記録して2004年にメジャーデビュー。2年目には正捕手となり、打率.294をマーク。1年早くデビューしていた一塁手ジャスティン・モルノーとともに注目され「MM砲」と呼ばれるようになる。

 198センチの長身。長距離打者ではなく広角に打ち分けることができるアベレージヒッター。また捕手としても強肩で、2007年には.533(45企図24盗塁刺)、2013年には.425(40企図17盗塁刺)で、盗塁阻止率1位になっている。2008年~2010年には3年連続で捕手のゴールドグラブ賞に輝いた。

2009年にイチローと超ハイレベルな首位打者争い

 マウアーは2006年に.347で首位打者を獲得。この年はヤンキースのデレク・ジーターと激しいデッドヒートを演じた。2008年に.328で2度目の首位打者。そして翌2009年も.365で連続首位打者。この年はイチローも好調で、両者は9月になっても打率.360台の高いレベルで厘差の打率争いを演じた。しかしマウアーは1度も首位の座を明け渡さなかった。この年は出塁率、OPS(出塁率+長打率)も1位となり、MVPに選出されている。

 2010年オフにツインズと8年1億8400万ドル(約210億円)の大型契約を結ぶ。このころからマウアーは一塁での起用が増えていたが、脳震盪の影響、守備の負担を軽減するため、2014年から一塁手に専念することとなった。

 しかし、皮肉なことにこの年から成績が下落。長打も減り、平凡な成績になってしまった。2017年に打率.305と久々に3割をマーク。復活が期待されたが、大型契約が切れる2018年のシーズン前には引退をほのめかしていた。4月には2000本安打を記録、しかしオフに入って引退を正式に表明した。最後の年もレギュラー選手として規定打席に達していた。

 15シーズンの通算成績は1858試合で6930打数2123安打、143本塁打、923打点、打率.306だった。今では珍しいツインズ一筋のフランチャイズ・プレイヤー。2123安打はツインズ選手としては歴代4位だった(1位はサム・ライスの2889安打)。

 捕手としてプレーした2004年から13年までの通算打率は.323、一塁手に転向した2014年から2018年までは.278だった。ライバルのイチローよりも10歳年下の35歳での引退は早すぎる気もするが、21世紀のMLBを代表する名捕手だったといえるだろう。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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