検証 長崎市政 田上市長の3期 <職員力> 高い理想 減らないミス

 7日、長崎市内。入庁3年目の長崎市職員ら約60人が、決算の仕組みや書類の保存期間など基礎知識の座学を受けていた。長崎市が職員の基礎力向上に向け本年度、人事課内に新設した「職員研修所」による講習の一環。参加者の一人は「上司が忙しそうで、仕事で分からないことを聞けないときがある。自分でミスに気付かないといけない」と気を引き締めた。

 長崎市長の田上富久は2007年の就任時から「市民力」「地域力」に加えて、「職員力」の向上を目標に掲げている。「自ら考え、自ら発信し、自ら行動する職員」が理想像という。

 田上は当選後「職員力推進室」を設置し、職員と一緒に食事しながら話し合う「市っぽく手弁当会議」を定期的に開くなど職員のやる気や業務の効率性の向上に努めている。「1人1改善」を目標とする業務改善提案も年々増え、「職員の中に考える意識と行動が広がってきている」と自己評価している。

 ただ足もとでは職員の“凡ミス”が後を絶たない。

 職員の懲戒処分件数は田上の1期目は59件。2期目は36件に減ったものの、3期目途中の現在は40件超と既に2期目を超えている。長崎市議会は、3期目だけで3度の再発防止の徹底を申し入れており「異常事態だ」(五輪清隆議長)。

 11月8日には工事設計に必要な見積書を偽造するなど職務怠慢があったとして男性職員を停職1カ月の懲戒処分にした。記者会見で、柴原慎一総務部長は「意識のたるみがないとは言えない」と陳謝した。

 一連の中身を見ると、近年は事件性のある不祥事が減る一方、管理職を含めて事務処理ミスや業務の遅滞が目立っている。田上も「若手職員が地域と一緒に現場で課題を解決できるような取り組みを進めているところだが、基礎的な力が弱くなっていると思う。業務の質を高めないといけない」と語る。

 背景に何があるのか。職員数は、田上就任後の行財政改革で3割減って現在3千人体制となっている。人事課は民間委託の推進などにより「適正」を維持しているとするが、現場には「忙しくなった。人を減らしすぎでは」との声がある。

 田上自身による職員の指導についても「市長になって最初のころはかなり力が入っていたが、最近は勢いを感じない」(30代職員)との指摘もある。2010年に職員の不祥事が相次いだ際、田上は全職員を対象に直々に再発防止を呼び掛けたが、その後、そうした対応はないという。

 理想の職員像に向け乗り越えるべきハードルはまだ高そうだ。

職員の基礎力向上に向け、座学を受ける市職員=長崎市魚の町、市男女共同参画推進センター・アマランス

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