世田谷一家殺害事件の遺族が講演 「悲しみや弱さ 支え合う社会に」

 2000年に東京都世田谷区で一家4人が殺害された事件の被害者遺族、入江杏さん(61)は10日、長崎市内で「悲しみを生きる力に」と題して講演した。

 事件は2000年12月30日に発生。入江さん方の隣に住んでいた妹家族4人が殺害され、当時6歳と8歳の子どもの命も奪われた。今も犯人逮捕に至っていない。

 入江さんは現在、大切な人を失い悲しみや喪失感を抱える人たちを支える「グリーフケア」の活動に携わり、上智大グリーフケア研究所非常勤講師も務める。だが事件発生直後は妹家族を失った絶望、助けてやれなかったという罪責感とともに、母から「『事件を誰にも知られないようにして。知られたら外も歩けない』と言われ、その重荷にどうしていいか分からなかった」と振り返った。

 時がたち、悲しみと向き合うようになり「悲しみを閉じるのではなく、開いていく一歩があったからこそ今がある」。悲しみや弱さを言いやすく、支え合う社会を望む考えを示した。

 亡くなった4人について「本当に一生懸命生きていた。犯人逮捕を願わない日はない」と語った。講演会は長崎犯罪被害者支援センター主催。約260人が来場した。

「悲しみを生きる力に」をテーマに講演する入江さん=長崎県長崎市平野町、長崎原爆資料館ホール

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