最多の女性選出、米中間選挙舞台裏

養成プログラム実施の選挙プロに聞く

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政治、経済分野における女性のリーダーを養成する団体「マイン・ザ・ギャップ」(ワシントンD.C.)の共同代表、クリスティン・ハフェート氏(左)とジェシカ・グラウンズ氏

 過去最多の女性議員が選出された米中間選挙。野党民主党が過半数を制した下院では435議席中、女性が90議席を獲得した。数々の女性問題を抱え、女性を軽んじるような発言を繰り返しているトランプ大統領と政権への反発、性暴力の被害を訴える「♯Me Too運動」の高まりが、女性たちが国政を目指す大きな要因となった。

 ただ、女性たちは「昨日今日思い立って」立候補したわけではない。米国では、女性の政治家養成に焦点を当てたさまざまな養成プログラムがあり、大勢の候補者を生み出す原動力となっている。実施団体のひとつ「マイン・ザ・ギャップ」(ワシントンD.C.)の共同代表クリスティン・ハフェート氏とジェシカ・グラウンズ氏に、養成の現状や課題など聞いた。グラウンズ氏は、2016年の大統領選挙で敗れたヒラリー・クリントン陣営のスタッフも務めた。 (共同通信=宮川さおり) 

 グラウンズ氏 2018年を真の「女性の年」にしようといううねりがあり、大勢の女性が立候補した。素晴らしい。だが、「まだまだ」とも言える。

 これまで、共和党も民主党も女性の候補者擁立に力を入れてこなかった。せっかく女性が勇気と使命感をもって出馬意向を固めても、政党側は「まだ待って」「次の機会に」を繰り返してきた。女性は「通りにくい」「擁立はリスク」と考えられていたからだ。

 だが、ラトガース大の「米国女性と政治センター」(CAWP)の研究調査で、女性は候補になる課程で多くの困難に見舞われるものの、当選する可能性自体は男性と変わらないということが判明。この調査結果を受け、共和党も民主党も女性候補者を募るようになった。

 女性の擁立は民主党の方が進んでいるが、共和党も以前と比べれば女性を立候補させようという流れになっている。後押しをしたのは、女性の政治リーダー養成を目的とするさまざまなプログラムだ。

 ただ、政党が考えているより、女性の候補者の数はもっと必要だと考えている。候補者、政治家が輩出されればされるほど、他の多くの女性が「私も」となり、政治参画への興味、関心が高まる。「政治は男のもの」といったカルチャーを変える重要な手段となる。

 ハフェート氏 プログラムでは、演説、メディアの使い方、資金集めなど具体的なスキルを教えている。だが、一番大事なのは「自信を持つこと」だ。

 そもそも女性に、政治的リーダーになることへの関心や自信を持ってもらうこと自体が難しい。なぜなら、ホワイトハウスも議会もこれまで長い間男性が作ってきたからだ。

 女性たちは「男のやり方」をまねること、踏襲することを求められることにうんざりしている。自信を喪失している。世の中を変えたいという意思がある多くの女性たちが「それなら非政府組織(NGO)で頑張ったほうがいいじゃないか」などと、政治以外の道で望みをかなえている。

 私たちは、女性がありのままの自分を出すことができ、自然にリーダーシップを取ることができるトレーニングを提供している。出馬の意思や自信を女性自ら押さえ込もうしないようにする必要がある。

 北欧を中心にヨーロッパで女性の政治参加が進んでいる大きな理由の一つは、候補者や議席の一定比率を女性に割り当てるクオータ制だ。地方議会か国政かを問わず導入されている。政党内部のルールでやっている国もあれば、法律で決めている国もある。

 グラウンズ氏 ただ、クオータ制しか方法がないわけではない。クオータ制は、より多くの女性に扉を開けるシステムだ。

 だが、女性たちの能力の証明、女性たちが男性たちに劣っているわけではないという証明にはならない。実力主義を重んじる米国でクオータ制導入は難しいと言われている。別のやり方でアプローチする必要がある。トレーニングプログラムはそのひとつだ。

 私は2003年から若い女性に焦点を当てたプログラムを立ち上げている。公職に就くのは、それまで〝すでに地位を確立した女性〟だったが、多様な背景を持つ、若い女性の政界進出を促そうというのが狙いだった。でも、立候補しようとする若い女性がそもそもいなかった。さまざまな団体が資金提供する用意もあったのに、手を挙げたのは数えるほどだった。

 ならば、大学、高校にいる若い女性に呼び掛けようと2007年さらに若年層をターゲットにしたプログラムを始めた。

 「政治家にならない?」と彼女たちに言ったところで意味がない。まず「地域であなたが気に入らない問題、変えたい問題はありますか」と問いかけ、その問題についてどうしたら変わると思うか、考えさせる。 

 全国の高校、大学でプログラムを実施したあと、より積極的な子を夏休みにワシントンに集めて1週間トレーニングする。現役の女性政治家にも会せて、インスパイアしてもらう。すでに1万5千人以上にトレーニングした。

 ハフェート氏 世界各国で、経済、政治の分野で女性参画を推進する活動をしてきたが、程度の差はあれ、女性にはだかる壁、課題は似たようなものと言える。世界共通の課題。政治の世界で女性が占める割合は地球レベルで見ると平均22%程度。アメリカの数字もこれまで似たようなものだった。

 立候補にこぎ着けた後も、女性たちは選挙活動を通じて、世の中のダブル・スタンダードを思い知らされるだろう。

 容姿をあげつらわれ、服装についてしのごの言われ、ハラスメントにあう。男性候補者にはないことだ。落ち込み、自信を失う前に「じゃあ、これを男がクリアーしてるというのか」と考えてほしい。

 そんなことを気にしないずぶとさを備えてほしい。自分が本当に対抗すべき、向き合うものは何か見定める必要がある。簡単ではないけれど、ノーリスク、ノーリウォード(報酬)。

「女性の候補者の数は政党が考える以上にもっと必要」と訴えるジェシカ・グラウンズ氏(7月17日、東京都港区)
「女性が政治家になるためには、スキルとともに自信を持つことが必要」と話すクリスティン・ハフェート氏(7月17日、東京都港区)

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 JESSICA GROUNDS 若手女性の選挙トレーニングを行う「ランニング・スタート」元代表。「最も影響力のある女性トップ50」「政治的影響力のあるトップ50」に選ばれ、米国女性のリーダーシップ養成分野で先駆的存在。ヒラリー・クリントン氏ら多くの女性たちの選挙キャンペーンをサポート。

 KRISTIN HAFFERT ジェンダー間の平等を目的とするリーダーシップ・トレーニングの専門家。これまで世界100カ国以上で、ジェンダー教育に関わってきた。2002年、米国民主党国際研究所(NDI)で女性とジェンダー間の平等に関するチームを立ち上げた。

◎マイン・ザ・ギャップ

 ハフェート氏とグラウンズ氏が立ち上げたコンサルタント会社。女性の政治参画を支援してきた二人の経験とノウハウを生かして、企業や非政府組織(NGO)などにも女性リーダーの育成やコンサルタント業務をを行っている。昨年には、カルフォルニア州の政策決定課程やビジネス分野のリーダーショップにおける女性参画を促す新しいプログラムを開発した。