米原潜の佐世保入港が減少 北との緊張緩和背景か

 昨年過去最多を記録した米海軍原子力潜水艦の佐世保への入港回数が、今年は減少している。識者は、弾道ミサイル発射の中止や史上初の米朝首脳会談実現など、北朝鮮と米国の緊張緩和が背景にあるとみている。

 佐世保市基地政策局によると、2017年の原潜の佐世保入港は、原潜シードラゴンが1964年に入って以来、最多の26回に上った。一方、今年の入港回数は12日現在で14回。2017年の同期に比べ5回、年間で2番目に多い2016年の同期より8回少ない。

 米原潜は朝鮮半島周辺に展開し、弾道ミサイル発射など北朝鮮の情報収集や監視、偵察を担うとされる。佐世保入港が2016、2017年と2年連続で最多を更新した背景にも、緊迫する北朝鮮情勢があるとみられていた。

 ところが今年に入ってから、北朝鮮をめぐる情勢は変化。静岡県立大グローバル地域センター特任助教、西恭之氏(国際安全保障論)によると、弾道ミサイル発射は2016年に最多の24回、2017年は20回を数えた。しかし、2017年11月28日を最後に約1年にわたり確認されていない。西氏は「北朝鮮がミサイル発射を中止し、情報収集のために原潜が行動する回数が減っている」と分析する。

 さらに西太平洋における空母打撃群と、部隊の一部として動く原潜の行動がともに減っていることも要因とする。「空母打撃群を使って北朝鮮に圧力をかけなかったことと、空母が定期整備に入る時期が重なった」とみる。

 米軍の動向を監視するリムピース佐世保編集委員の篠崎正人氏も「6月の米朝首脳会談などで緊張が緩和したことが要因」と指摘する。さらにミサイル追跡艦「ハワード・O・ローレンツェン」の動向に着目。篠崎氏によると、同艦の佐世保入港は2016年8回、2017年4回。出航後に北朝鮮の弾道ミサイル発射が確認されるケースがあった。

 今年はこれまでに6回入港しているが「昨年までは北朝鮮の弾道ミサイルを追跡、監視する任務を担っていたが、今年は自国のミサイル発射訓練の支援に当たっている」と分析。「北朝鮮を取り巻く情勢を受け、佐世保に入港する米艦船の動向に変化が起きている」と話している。

9月22日に一時寄港した米原潜アレキサンドリア。その後は佐世保への入港は止まっている=佐世保港

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