【この人にこのテーマ】〈東京鋼管会創立60周年〉《山田秀之会長(丸八鋼管社長)》会員企業の統合・再編、変化に応じた活動推進 若手世代の積極的参画、新規会員獲得にも注力

 東京鉄鋼販売業連合会(東鉄連)の加盟団体である東京鋼管会は今年、創立60周年を迎えた。1958(昭33)年、東京都中央区を中心としたパイプ問屋が集まり「東京中央鋼管会」として発足。65(昭40)年に現行名に改名した。鋼管扱い業者の交流・親睦の場として、流通業界向上の場として、時代やマーケットの変化に対応した活動を推進してきた。13代目となる現在の山田秀之会長(丸八鋼管社長)に会の歴史や今後の運営方針などについて聞いた。(後藤 隆博)

――会長として、東京鋼管会60周年の節目を迎えた心境を。

 「60年の歴史の重みを感じる。礎を築いてこられた先人たち、歴代会長をはじめとして先輩理事の功績、会員各社の活動への協力に改めて敬意を表したい。これまで延べ180社余りの入会があり、様々な業界変遷の中で統合や再編を経て、現在の会員数は52社。東鉄連傘下9団体の中では本所鉄交会、京橋鉄友会に次ぐ規模を維持している。親睦団体としての良き伝統を踏襲しつつ、マーケット変化に対応しながら様々な活動を推進してきた歴史とも言える」

――会を取り巻く業界環境も、この60年で随分と変わった。

 「当初は同業の過当競争排除、オーナー系特約店の親睦会としての色彩が濃かった。ただ鋼管流通業界も厳しい冬の時代があり、倒産、合併、廃業などで草創期から当会に携わってきた老舗特約店が相次いで姿を消した。ただ『鋼管』という品種で、時代ごとで話題や課題などを共有する場としてのニーズは常にあったのだと思う」

 「現在の鋼管会の原型ができたのは、今から10年ほど前。『鋼管を生業としている人の団体』というコンセプトのもと、商社系特約店や鋼管加工メーカーなどに対しても幅広く門戸を広げた。会の活動にあたっては、オーナー系と商社系の親睦の場としての機能も追加。現在は、商社系特約店にも理事として海外研修のアレンジなどで会の運営に携わってもらっている。こうした組織・会員構成・活動の変化を経ても、会員同士は非常に友好的で仲が良い。創立当初からの『親睦』という伝統は、しっかり踏襲されている」

――今後の会の運営について。

 「東京鋼管会では、参加者全員がアロハシャツを着用した暑気払い、釣り大会、海外視察研修旅行、独自ルールによるゴルフ大会など、様々な趣向を凝らした恒例行事がある。ただ、これら会員に好評な行事も、さらに工夫を重ねなければならない。また『会員に役立つ』をコンセプトに、工場見学会や勉強会を兼ねた講演会、従業員や家族らが参加できるイベントなども検討していきたい。立場や系列色をできるだけ排除した親睦活動を随時行っていく」

 「今後の東京鋼管会の運営を考える上で、『世代交代』もキーワードの一つ。現在、当会理事は40~50代が中心。会員会社には30代の社長もかなり多くなってきた。次世代の鋼管会を担うべく、行事への積極的参加とともに、近い将来そうした若い世代が互いに切磋琢磨して積極的に会の運営に携わってもらいたいと思う」

――山田会長が2年前の就任時に課題に挙げていた新規会員の獲得については。

 「オーナー系、商社系、鋼管加工業者問わずに、加入意思があれば積極的に参加を呼び掛けていきたい。当会は上下関係があまりなく、若い世代の会員も増えているので、参画しやすい土壌はある」

 「より幅広く門戸を広げるという観点から言えば、管材商社など少し系統の違う業種の加入も検討してよいのではないか。『鋼管』という品種で仲間づくりができる場として、会の活動範囲も広げていければと思う」

 「会員の世代交代やメーカー・商社の再編などの影響から我々の取り巻く環境はさらに変化が続くだろう。しかし、鋼管会の存在は不変、鋼管商売への情熱は今後も当会を通じて共有し続けることができると確信している」

東京鋼管会相談役・岡部耕一氏(東成鋼管相談役)/個性豊かな諸先輩の指導・薫陶に感謝/次世代へ健康第一、良き人間関係構築を

 東成鋼管の岡部耕一相談役は、東京鋼管会との付き合いが最も長い業界の重鎮。60周年の節目に馳せる想いも特別だったようだ。

 岡部相談役の父である耕平氏は、東京鋼管会の初代会長。鋼管会発足の1958(昭和33)年、岡部相談役は大学4年生で翌年東成鋼管に入社。「父は体が弱くて、晩年はほとんど自分が代役として鋼管会の行事に参加していた」という。様々な業界変遷を経た中で、発足時から現在まで鋼管会に加盟しているのは、現会員では東成鋼管だけとなった。

 96(平8)年4月~02(平14)年4月までは、東京鋼管会の第9代会長として会の運営にあたった。01年5月から2年間は、上部団体である東京鉄鋼販売業連合会(東鉄連)の会長も歴任。鋼管会では現在も相談役として、ご意見番的役割を担う。

 今回、記念祝賀会に参加した岡部相談役は「私の鋼管特約店人生は、まさに鋼管会とともにあったようなもの」と振り返り「多くの個性豊かな諸先輩の方々に親しくご指導・薫陶を受けたことに改めて感謝したい」と述べた。

 60周年の節目にあたり、10年前に東京鋼管会がまとめた50周年記念誌を再読したという。同記念誌に掲載されている写真の8割は、岡部相談役が提供したもの。「すでに鬼籍に入られた方々を偲び、寂しさと懐かしさ、歳月の重さに感慨ひとしおだった」と語る。

 岡部相談役は12年度から東京金属事業健保組合の理事長職を歴任。組合運営、健康寿命延伸への取り組みなどに注力している。この間、自身も大病に見舞われ、改めて健康の重要さを再認識した。

 次代を担う鋼管会会員に対しては、健康第一を説きつつ、50周年時に語った「鋼管会は自己研鑽と良き人間関係構築の場であってほしい」との思いを今も持ち続けている。

創立60周年祝賀会を開催/OB役員も参加、伊勢神宮参拝

 東京鋼管会は10月12日、三重県志摩市の志摩観光ホテルで創立60周年記念祝賀会を開催した。当日は祝賀会に先立ち、一向は伊勢神宮の外宮と内宮で特別参拝(御垣内参拝)を行った。

 祝賀会で山田会長は「会を支えてこられた歴代会長、先輩理事の方々に敬意を表したい。鋼管流通の変化はまだ続くだろうが、鋼管商売への情熱を皆で共有し続ける会として皆で歴史を積み重ねていこう」と挨拶した。

 志摩観光ホテルは、一昨年に伊勢志摩サミットが開催された地。今回は現会員会社のほか同会相談役、歴代OB理事らも参加して昔話に華を咲かせた。

 会場では鏡開きの後、サミット時に出されたディナーと同じメニューを堪能。二次会も大いに盛り上がった。

 今回60周年記念品として、東京鋼管会の会員章プレートを作成。後日、会員全社に贈呈された。

© 株式会社鉄鋼新聞社