<大ヒット盤> 吉岡聖恵『うたいろ』 原曲の歌手とのコラボに聴こえる面白さ

吉岡聖恵『うたいろ』

 いきものがかりのボーカル吉岡によるカバー集。バンドの活動休止と再開の間に発表されたが、他の部分でも中間点のように感じた。

 まず、原曲をより聴きやすくする意味での中間点。南沙織もスピッツもホルスト原曲のラグビーW杯テーマ曲も一堂に会したカバーを聴くと、こんなに良いなら他の曲も、と元の歌い手や作家に興味が広がる。特に、米津玄師『アイネクライネ』は流れるような歌唱の原曲も雰囲気があって良いが、吉岡版はラブソングとして響く。

 また、吉岡が歌うだけで、いきものがかりと原曲歌手がコラボした中間的作品のように聴こえるのも面白い。ゆず『少年』は路上で仲良く歌っていそうだし、笠置シヅ子『ヘイヘイブギー』は、いきものがかり『じょいふる』の姉妹作かと思うほどハマっている。彼女の明るい歌声が、元の歌い手や楽曲、そして自身のバンドなど周囲の様々な魅力を再認識させる。まさに朝ドラのヒロインのようだ。

 ラストは大滝詠一や山下達郎が制作した当時の演奏音源を使用した『夢で逢えたら』(セリフがないのは惜しい(笑))。人を輝かせることで、結果として自分にも光が灯るような感覚を本作から学ぶはず。

(ソニー・3000円+税)=臼井孝

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