ロンドン北東部イルフォードで12日、妊娠8カ月だった女性が元夫にクロスボウで撃たれ死亡したが、帝王切開により出産、男児は無事だった。クロスボウの矢は胎児のわずか数センチの距離をかすめていた。夕刊紙「イブニング・スタンダード」(電子版)など英メディアは「奇跡の男の子」として大きく事件を伝えた。
女性はサナ・ムハンマドさん(35)で自宅にいたところを、元夫のウンマサレガドゥー容疑者(50)に撃たれ腹部に重傷を負いすぐに病院に運ばれたが、約3時間後に死亡。医師らはサナさんの帝王切開を行い、男児を取り出した。警察によると、男児の健康状態は良好だという。
矢はサナさんの心臓にまで達していたが、胎児にはかろうじて当たらなかった。医師らは矢を抜き去るのは危険と判断、矢を体に残したまま帝王切開に踏み切った。
夫のイムティアズさん(42)によると、ウンマサレガドゥー容疑者が物置に隠れているのをイムティアズさんが発見。同容疑者はすぐに飛び出し自宅に侵入、サナさんを撃ったという。イムティアズさんは「逃げろ」と叫びながら後を追ったが間に合わなかった。警察は同容疑者を殺人容疑で逮捕、動機などを追及している。
サナさんはモーリシャス出身。同じく同国出身のウンマサレガドゥー容疑者と離婚した後、7年前にパキスタン出身のイムティアズさんと結婚、ロンドンで暮らしていた。男児は遺族らによりイブラヒムと名付けられたという。 (共同通信=太田清)