セレッソ大阪のホームスタジアムであるキンチョウスタジアムが、先日行われた11月6日の名古屋グランパス戦を最後に第三期改修工事に入りました。
ラストマッチを前に、選手達にキンチョウスタジアムについて話を聞いてみると、私が聞いた選手全員が口を揃えて「このスタジアムが好きだ」と話していました。
その一番の理由は、ピッチとサポーターの距離が近く、相手を圧倒させるようなホームの雰囲気を作り出してくれるからだと言います。
実際、昨季ユン・ジョンファン監督が就任して以降の戦績を振り返っても、20勝3分2敗と圧倒的な強さを見せており、この好成績は決して偶然のものではないはずです。
簡単に言葉では表すことができないパワーが宿るキンチョウスタジアム。
選手、サポーターのたくさんの想いが詰まったこの場所は、私にも様々な思い出を残してくれました。
そこで今回は、私が2013年に応援リポーターに就任してから、特に忘れられない、キンチョウスタジアムでの5つの思い出をお話したいと思います!
人生初のゴール裏
2013年7月10日 J1第15節 vs横浜F・マリノス
それは私がまだ「ピッチリポーター研修中」だった頃のことです。
デビューを控えていた当時、「ゴール裏で観戦出来るのは今しかない!!」と、チケットの取り方を調べて、いざ初観戦したのがキンチョウスタジアムのゴール裏でした。
今思えば、何も知らないのによく行ったなぁと思うのですが…(笑)
周りのサポーターのみなさんに馴染めるようにユニフォームをゲットし、タオルなどの応援グッズを身に着け気合い十分でスタジアムに向かった記憶は今も強く残っています。
当時の私の頭には「開場」などの仕組みが全く入っていなかったので、現地に着いてみると、そこは1番後ろの「ぎゅうぎゅう」なエリアでした。
正直、とても不安な気持ちになりましたが、応援の仕方を教えてもらうなど周りのサポーターの方々から優しい声を掛けていただき、試合が始まったら、本当に楽しい時間を過ごしました!
ゴール裏の一体感に圧倒されたと同時に、「みんなで一緒に声を合わせてって大人になってからしたことがなかったなぁ…」とどこか懐かしい気持ちになったことも覚えています。
選手が口々に言うように、キンチョウスタジアムはサポーターにとってもピッチが本当に近く感じられるスタジアムです。
自分たちの声が選手たちを直接後押ししている感覚となり、ボールも飛んで来たり、選手たちの声が聞こえてきたりと、私もその迫力に大興奮!
試合も2対1でセレッソが勝利し、その結果に「初めまして」の皆さんとハイタッチして喜び合い、うれしさも倍増でした!
最初は「ぎゅうぎゅうだなぁ…」と不安に感じたこの一体感こそが、応援している側を熱狂させ、選手にも大きなパワーを与えるんだと、色々な発見があった「ゴール裏初観戦」。
生まれ変わったキンチョウスタジアムでも、またあの場所に行ってみたいです。
背番号8の別れ
2014年7月15日 J1第12節 vs川崎フロンターレ
セレッソのエースナンバーである「8」をつける柿谷選手のスイス・バーゼルへの移籍が決まり、移籍前のラストゲームとなったのがこの川崎戦でした。
私は試合後に、柿谷選手に最後のインタビュー収録をすることになっていました。そこで、インタビュー中に流すためのサポーターのメッセージ映像を事前にゴール裏に録りに行ったのですが、その時点でもう私は半泣き状態(笑)
サポーターのみなさんの中での柿谷選手は「大切な8番」であると理解しているつもりだったのですが、改めてその思いを聞き、「大切な家族」を見送るような感覚なんだと知ったからです。
その試合終了後に行われた退団セレモニーで、柿谷選手がサポーターへの感謝の思いを告げ、「もっともっと強くなって、ここの8番がもっともっと似合う選手になって帰って来たいと思います」という言葉を残しました。
クラブスタッフの皆さんの表情、スタンドからの激励の声…。あの時のキンチョウスタジアムの雰囲気を忘れることはないでしょう。
「セレッソの8番」という背番号の重さを改めて知った、非常に濃厚な1日でした。
歓喜のインタビュー
2016年12月4日 J1昇格PO決勝 vsファジアーノ岡山
この前年にJ1昇格を逃し、リベンジで臨んだ二度目のプレーオフ決勝が開催されたのもキンチョウスタジアムでした。
ちょうど一年前に同じ舞台で悔しい思いをしているだけに、私は少し怖さも感じながら、雨の中をびしょ濡れでリポートをしたことを覚えています。
肝心の試合は、選手一人一人が球際で激しく、攻守に気迫溢れるプレーを終始見せてくれて、いつも以上に強い想いが感じられるパフォーマンスを披露。最終的には清原翔平選手(現ツエーゲン金沢)のゴールでJ1昇格が決まりました。
試合終了のホイッスルが鳴った瞬間の光景は、今でも忘れられません。
泣き崩れる選手たちや、スタンドからの歓喜の声。私も自然と涙がボロボロと出てきて止まりませんでした。
そんな状態のまま、ゴールを決めた清原選手と山口蛍選手にヒーローインタビューを敢行。その後はピッチに入り、スタジアムを周る選手への突撃インタビューも任されました。
何か大きなものが懸かった試合でのインタビューは、私にとって初めての経験で、試合前は「これはさすがに緊張するかも…」と思っていたのですが、その予想は完全に外れました。考えずとも自然と聞きたい言葉が溢れてきたからです。あんなに嬉しい気持ちになれたインタビューは初めての感覚でした。
また、インタビューを続けながら選手と一緒にスタジアムを周回できたことも貴重な体験でした。「こんなにサポーターのみなさんの表情も見えるんだ…」と驚かされた記憶もはっきりと残っています。
勝利後のピッチから見たあのキンチョウの光景は、選手たちにとってもかけがえのないものになったでしょう。
あの夜のことは、私だけではなく、選手、サポーターもずっと忘れられないと思います。
ピッチリポーターとしての感謝
2017年6月4日 J1第14節 vsアルビレックス新潟
キンチョウスタジアムは、ピッチリポーターとして、充実した仕事をさせてくれるスタジアムでもありました。
ピッチやベンチとの距離がとても近かったので、選手同士の声、ベンチから選手たちへの声、監督の表情などが、とても拾いやすかったからです。
なかでも印象に残っているのが、2017年の新潟戦。
前半なかなかゴールが奪えずに0-0で迎えた後半。柿谷選手のPKで先制点を奪うと、流れは一気にセレッソへ。セットプレーから追加点を取り、73分に2-0となった時、ユン・ジョンファン監督が柿谷選手を呼んだのですが、「なにを伝えるんだろう」と近寄ると、監督は「もう1点取りに行こう」と声を掛けていたんです。
「もう守り切るのかな…」と思っていた矢先に送られた具体的な指示、私はすぐにリポートを入れました。
すると、その指示通り、それから2つのゴールを重ねて結果は4-0の圧勝。
リポート通りの試合展開になり、私も心の中でガッツポーズ!(笑)
それまでもいろんな声や表情を伝えてきましたが、私の中で最も嬉しい瞬間の一つになったことを覚えています。
「ピッチにいるからこそ伝えられる情報を」と日々取り組む中で、たくさんの声や表情を掴むことができるキンチョウスタジアムは、ピッチリポーターとしても感謝しきれないスタジアムでした。
ラストゲーム・アゲイン
2018年11月6日 J1第28節 vs名古屋グランパス
本来なら、9月の磐田戦がラストゲームとなるはずでしたが、台風の影響で延期されていた名古屋戦が、急遽キンチョウスタジアムで行われることになりました。
残り数試合での目標としていた「ACL圏内」が厳しい状況となった中での一戦でしたが、ここ最近のホームゲームでは一番悔しくて、ある意味忘れられない試合になりました。
戦う気持ちは出ていたものの、何かが噛み合わずに0-1での敗戦。去年から1度しか負けていなかったこのスタジアムで、最後の最後に悔しい結果に…。ピッチサイドや試合後の選手たちの表情も悔しさに溢れていて、それほど大きな敗戦でした。
その後、柿谷選手に取材をしに行くと、こう言っていました。
「オレらがこれから戦って行くのがヤンマースタジアム。ここからは、あっちでもっと勝っていけるようにならないとね」
その言葉通り、先日は二連覇が懸かっていた川崎を相手にホームの意地を見せて勝利!早速、名古屋戦の悔しさをヤンマースタジアムで晴らしてくれました!
思い返せば、キンチョウスタジアムでの思い出は、サポーターとしても、リポーターとしても、楽しい思い出がほとんどです。
たくさんリポートをさせて頂き、たくさんのヒーローインタビューもすることができました。
選手達は「もっと成長して、強くなった姿で、新しいスタジアムで戦いたい!」と言っています。
次に会えるのは2021年。
どんなセレッソで、新しいスタジアムを迎えるのか、いまからワクワクが止まりません!
キンチョウスタジアムありがとう!また大きくなった姿で会いましょう!!