広島からFA宣言の丸、他選手と次元の違う「選球眼」 突出する指標

広島・丸佳浩【写真:荒川祐史】

メジャーでは打率より出塁率重視、ホークス柳田は4年連続でタイトル獲得

 MLBの試合中継ではAVG(打率)とともに、OBP(出塁率)が表示されることが多い。四死球も含めた出塁率は、MLBではむしろ打率よりも重視されるといってもよい。NPBでも最高出塁率は打撃タイトルの1つになっている。まずは、今季のセ・パ両リーグの出塁率10傑を見ていこう。

◯パ・リーグ
1柳田悠岐(ソ).431
(475打167安62四8死、打率.352)
2近藤健介(日).427
(462打149安87四1死、打率.323)
3吉田正尚(オ).4030
(514打165安69四7死、打率.321)
4秋山翔吾(西).4029
(603打195安77四4死、打率.323)
5山川穂高(西).396
(541打152安88四16死、打率.281)
6西川遥輝(日).391
(528打147安96四3死、打率.278)
7浅村栄斗(西).383
(565打175安68四2死、打率.310)
8井上晴哉(ロ).37408
(476打139安63四3死、打率.292)
9中村奨吾(ロ).37402
(552打157安60四22死、打率.284)
10島内宏明(楽).373
(394打115安47四6死、打率.292)

◯セ・リーグ
1丸佳浩(広).468
(432打132安130四3死、打率.306)
2鈴木誠也(広).438
(422打135安88四5死、打率.320)
3山田哲人(ヤ).432
(524打165安106四4死、打率.315)
4坂本勇人(巨).424
(441打152安61四0死、打率.345)
5糸井嘉男(神).420
(419打129安77四8死、打率.308)
6ビシエド(中).419
(512打178安51四15死、打率.348)
7平田良介(中).410
(493打162安67四3死、打率.329)
8青木宣親(ヤ).409
(495打162安51四19死、打率.327)
9坂口智隆(ヤ).406
(508打161安75四3死、打率.317)
10岡本和真(巨).394
(540打167安72四4死、打率.309)

 パ・リーグは首位打者を取ったソフトバンク柳田が最高出塁率。柳田はこれで4年連続のタイトルとなる。毎年、安打と四死球を合わせて250前後の出塁をしている。2位近藤、3位吉田、4位秋山までが左打者。右打者の1位は本塁打王の山川だ。

 セ・リーグ1位の丸は初めての出塁率1位だが、四死球は安打よりも多い133。今季の丸は本塁打王ソトに2本差の39本塁打を記録したが、相手がこの長打力を恐れたのか、四球が前年の83から急増した。2位に同僚の鈴木、3位にはヤクルトの山田哲人と強打者が並ぶ。

 NPBの出塁率の定義は1985年に改定されている。従来は、出塁率 =(安打+四球+死球)÷(打数+四球+死球)だったが、1985年以降、出塁率=(安打+四球+死球)÷(打数+ 四球+死球+犠飛)となった。このため出塁率の記録は、1985年の前後で分けられている。

丸のIsoD.162は12球団ダントツ、2位に.044の大差

◯1985年以降の出塁率10傑
1落合博満(ロ).487/1986年
2落合博満(ロ).4806/1985年
3バース(神).4805/1986年
4落合博満(中).4728/1991年
5小笠原道大(日).4725/2003年
6柳田悠岐(ソ).4694/2015年
7ペタジーニ(ヤ).4687/1999年
8丸佳浩(広).468/2018年
9カブレラ(西).467/2002年
10ペタジーニ(ヤ).466/2001年

 丸の今年の出塁率は史上8位の高率だったが、出塁率には、打率の要素が多分に含まれている。本当の選球眼=四死球を選ぶ能力を見るためには出塁率から打率を引かなければならない。セイバーメトリクスでは、この指標をIsoD(Isolated Discipline)と呼んでいる。今季の両リーグのIsoDの10傑は以下のようになる。

◯パ・リーグ
1山川穂高(西).115(出.396 率.281)
2西川遥輝(日).113(出.391 率.278)
3近藤健介(日).104(出.427 率.323)
4デスパイネ(ソ).095(出.333 率.238)
5森友哉(西).091(出.366 率.275)
6中村奨吾(ロ).090(出.374 率.284)
7吉田正尚(オ).082(出.403 率.321)
8井上晴哉(ロ).082(出.374 率.292)
9島内宏明(楽).081(出.373 率.292)
10秋山翔吾(西).080(出.403 率.323)

◯セ・リーグ
1丸佳浩(広).162(出.468 率.306)
2鈴木誠也(広).118(出.438 率.320)
3山田哲人(ヤ).117(出.432 率.315)
4糸井嘉男(神).112(出.420 率.308)
5福留孝介(神).109(出.389 率.280)
6糸原健斗(神).104(出.390 率.286)
7バレンティン(ヤ).102(出.370 率.268)
8田中広輔(広).100(出.362 率.262)
9筒香嘉智(De).098(出.393 率.295)
10坂口智隆(ヤ).089(出.406 率.317)

 パ・リーグは本塁打王の西武・山川が1位になる。各球団の投手が警戒していたということだろう。しかし、2位の日本ハム西川は10本塁打、3位の日ハム近藤は9本塁打。この2人は純粋な選球眼で四球を選んだことがわかる。出塁率1位の柳田のIsodは.079で13位。柳田も選球眼は優秀だが、高い打率によって出塁率のタイトルを取っている。

 一方で、広島の丸は他の選手とは次元が違う.162を叩き出している。両リーグでも2位に位置するチームメートの鈴木に.044もの大差をつけており、今季の丸の凄さがよく分かるだろう。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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