金属行人(11月15日付)

 あるところで講演を頼まれた。参加者は経営者、営業担当者、エンジニアなどさまざまだったが、共通していたのは「今が鉄鋼・非鉄業界にとって大きな転換点であり、どちらに向かうのかを探ろうとしている」こと。事業環境の変化が速いだけに、今のままとどまっていてはいけないという危機感の強さが参加者から感じられた▼ある国内鉄鋼メーカーの幹部は「3年間の中期計画を策定したから、3年間はその目標を達成するための期間だと考えていては駄目だ。必要に応じて前提を変え、目標を変えたっていい」と話す。高炉業が今のままでやっていけるのか。電炉業は、電気代の前提が変わったら、どう動くべきなのか。スクラップ業は中国の環境政策変化を受けて、どういう手を打つ必要があるのか。それぞれの立場で考えるべき課題が多い▼海外鉄鋼大手の幹部と話す機会もあるが「鉄鋼業にとどまらず、周辺領域、例えば他の金属素材に踏み込んでいくべきだ」と考える人が増えているように感じる。他素材を知ることで、鉄の良さや改善点を再発見することもあるだろう。視野を広く持って情報収集し、固定概念にとらわれずに、柔軟な発想でビジネスモデルを構想する必要があると思う。

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