熊本地震後、初の熊本市長選 「私たちに目を向けて」 仮設住民ら支援切望

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仮設団地を訪れた候補者の遊説に耳を傾ける被災者ら=熊本市南区

 18日投開票の熊本市長選は、2016年4月に熊本地震が起きてから初の市長選となる。市内で仮住まいを続ける被災者は10月末現在で約5700世帯。自宅や生活の再建に不安を感じつつ選挙戦を見つめる被災者も少なくない。

 市は6~7月、市内の被災者を対象にアンケート調査を実施。970世帯から回答を得た。自宅再建が必要なのに、めどが立っていないとの回答は1月の前回調査より7・1ポイント減ったものの、29・8%を占めている。

 めどが立たない理由で最も多いのは、資金不足の67・6%。「融資が受けられない」も25・0%あった。

 「中心市街地の再開発より、私たちに目を向けてほしい」。南区城南町の藤山仮設団地で暮らす元自営業の男性(65)は、遊説する候補者から距離を置いてつぶやいた。

 自宅は地震で全壊。運送の仕事は廃業に追い込まれた。自宅再建を目指しているが、「60代での資金確保は大変」と言う。市の調査でも、再建のめどが立たない被災者は、50代以下より60代以上が多かった。

 被災者を対象にした医療費免除も昨年9月末で終了。再開を求める声は、市の調査にも寄せられた。

 東区秋津の秋津中央公園仮設団地に住む元学校職員の男性(66)は、94歳の母親と2人暮らし。「母の介護があるため働けず、年金収入だけでは厳しい」と医療費などへの支援を切望している。

 地震から2年半余り。市内に9カ所ある建設型仮設住宅の入居率は9月末時点で62・3%に減った。1年間で31・0ポイントの減少。自宅再建を断念し、南区富合町の南田尻仮設団地で賃貸住宅を探す田中絹枝さん(83)は「顔なじみになった人が出ていくたびに不安になる」と寂しさをにじませる。求めるのは「私たちに気配りしてくれる市長」だ。

 立候補している現職の大西一史氏(50)と新人の重松孝文氏(71)=届け出順=のうち、大西氏は被災者の生活再建を最優先で支援する「決意」をマニフェストに掲げた。地震に関する言及は多くはないが、「やるのは当たり前。あえて掲げていない」。

 一方の重松氏は、一部損壊世帯を対象にした市独自の支援や医療費免除の再開などを公約。その財源は「市長の判断で100億円くらいは調達できる」などと説明している。(猿渡将樹、酒森希)

(2018年11月15日付 熊本日日新聞朝刊掲載)