【メタルワン西日本3社統合の狙い】〈本田武弘社長に聞く〉地場顧客との接点強化 拡大路線志向、市場の変化に迅速対応

メタルワン西日本・本田社長

 メタルワンは7月1日、西日本・四国・九州の3地域法人を統合し、新生「メタルワン西日本」(資本金・3億円、本社・広島市)を発足させた。新たな枠組みにより、国内市場における〝売る力〟をどう強化していくのか。メタルワン西日本社長を兼務する本田武弘メタルワン副社長に聞いた。(谷山 恵三)

――新生・メタルワン西日本の拠点・人員体制から伺いたい。

 「広島に本社を置き、支社は中国(広島)、四国(高松)、九州(福岡)の3カ所、支店は姫路、水島、福山、徳山、宇部、長崎、那覇の7カ所、事務所は北九州と大分の2カ所に置いている。人員は合計82人だ」

――西日本の3地域法人を統合した狙いは。

 「国内はメタルワンの最重要市場だ。その国内市場が残念ながら長期的に縮小に向かわざるを得なくなっている中で、地域に密着し産業構造の変化に敏感に対応して、強い営業基盤を継続・発展させられる組織を作る。それが数年来の経営課題だった」

 「西日本は造船、プラントなど重工業の集積地であり、鉄の最大需要地の一つだ。中国、四国、九州で分断した組織体制では、社員の視野は広がらないし、新しい商売はなかなか生まれてこないが、一緒にやれば変えられる。メタルワンの今後の国内販売戦略、地域政策を決める大きな試金石にもなる」

――さらなる組織再編を検討するのか。

 「まずは西日本で成功モデルを作り、地域特性が異なる北海道、東北、北陸、さらには東名阪の組織のあり方へのヒントも得たい」

――メタルワンのSBU(戦略ビジネスユニット)制はいわば縦割りで、事業部がグローバル規模で収益責任も投資権限も持つ。メタルワン西日本の責任と権限は明確なのか。

 「管理会計上の収益責任は当然あるし、権限も持つ。SBUの縦軸に横連携を組み合わせ、グループ全体がより有機的につながる構造にしたいし、地域法人は横連携の重要な軸になる」

――国内市場が縮小していく中で、どう縮小均衡から脱却するのか。

 「既存の商売は重要だが、それしか見ずに日常業務に汲々とするだけなら、人員削減で営業力や情報収集力が低下し、次の人員削減を生む負のスパイラルに陥る。打開策の一つは横連携や協業の強化であり、目線を上げて他部署の事例も見て、グループ各社との協業にも精を出せば、必ず商材は広がるし、新しく成長する機会を捉えられる」

 「顧客のためにメタルワン本社から地場に移した方が良い業務があれば、移管あるいは委託の対象とする。例えば本社が受注・売り上げを計上している案件でも、地場の人間が足繁く通うことで、顧客との接点が増えれば、他に欲しておられるものや新たに必要とされるものも教えて頂けるようになる。鋼材だけでなく〝物を売る〟感覚で顧客の変化に追随し、一緒に需要を掘り起こしていく」

 「三菱商事や双日の案件情報などを共有するプロジェクト開発委員会活動への参画も、7月から従来以上に力を入れている。コミュニケーションの活性化は今後のメタルワングループの成長戦略の要点であり、西日本でも情報の発信・収集・共有を積極的に行えるようにしていきたい」

――事業規模や業績の目標観は。

 「現状は売上高650億~700億円だ。打つべき手を打てば、売上高は倍増が実現できると考えている。イメージとしては20年に売上高を5割拡大し、25年には倍増させたい」

――5月には那覇支店を復活させた。

 「沖縄地区の建設需要、インバウンド拡大に伴うインフラ整備などに対し、もう一度掘り起こしをする。那覇単独ではなく西日本全体で取り組むことで、より多くの情報が集まるようにする」

――本田副社長が社長を兼務する意義や、人事制度の一本化のめども伺いたい。

 「メタルワンの経営陣は覚悟を決めて今回の組織再編を実行した。スピード感も重要であり、だからこそ代表取締役副社長であり、営業管掌の営業トップが社長を兼務している。人事制度は来春には一本化する。拠点間の人事異動については必要に応じて行うが、異動ありきとは考えていない。スペシャリスト集団であることが一番大事だと考えている」

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