【工場ルポ】〈元旦ビューティ工業、西日本の製造拠点岡山工場〉縦葺き・折板主力、年産50万平方メートル規模 高度なロール調整技術に強み

 金属外装材大手の元旦ビューティ工業(本社・神奈川県藤沢市、社長・舩木亮亮氏)の岡山工場(岡山県津山市)は、1988年10月の開設から今年30周年を迎えた。西日本地区の製造拠点として機能し、縦葺き・折板屋根成形を主力に製造する同工場を訪ねた。(小田 琢哉)

 同工場は岡山県北の津山市内にある久米産業団地に立地する。中国自動車道院庄インターから数分の位置で、岡山県内以外に山陰・山陽側への交通接続が容易なため、製品運搬・現場納入の大きな強みとなっている。舩木元旦・元旦ビューティ工業会長が西の製造拠点を探していた時、高速道路から見えた場所に閃きを感じたと伝えられる。早々に土地を見て地元首長を訪問、舩木会長の泥がついた靴を見た首長が「この会社は本気だ、必ず当地に進出してくれる」と見て、地元の理解を得たことから進出計画はスピーディーに進行した。

 敷地総面積は約4万5千平方メートルあり、横葺き・加工品および部材倉庫の第一工場(延べ床面積3240平方メートル)、縦葺き・折板加工の第二工場(同2835平方メートル)で構成。操業開始時は第一工場のみで横葺きメインだったが、横葺きが山梨工場に統合され、現在は2ラインが稼働。1994年に縦葺きと折板に特化した第二工場が完成し、現在の主力工場として機能している。中部以西の関西・中四国・九州エリアの9営業所が受注した物件に対応し、関東エリアも一部請け負う。

 第二工場は特色ある六つの成形ラインを保有する。断熱材張りは3ラインが対応。体育館など大型物件向けの縦葺きやコンビニ店舗向け折板、嵌合式の大和葺きを製造する。アスベスト対策のスレート屋根改修向けバリヤルーフや、巻き取りコイル、協力会社に卸す商材を生産するラインもある。年間平均生産量は40万~50万平方メートルと、全社100万平方メートルの約半分を手掛け、横葺きが主力の山梨工場と並び製造拠点の双璧をなす。大型物件に対する鉄骨需要の伸長から、今年度は受注の山が高く、上期(3~9月)は22万平方メートルと前年度比2万平方メートル分を上乗せた。事業形態的に下期(10~12月)に成形加工が集中するため「12月をピークに、どれだけ積み上げられるか、下期にはさらなる繁忙期を迎える」(冨山隆己岡山工場長)。

 本来ロールフォーミンミングは一定の厚み・素材を加工する成形機を製造するが、同工場では0・4~0・8ミリ厚までの鉄、アルミ、銅、ステンレス、チタンと幅広い鋼種をロール調整で成型可能なことが、技術水準の高さを物語る。

 成形機は30機種以上あり、頻繁な段取り替えが必要。作業や製品の長さが決まっている横葺きと違い、縦葺きの場合は成形機から出てきた製品を手で受け止める作業者の手が不可欠で、大型物件に対してはトラック輸送以外に現場に成形機を持ち込んで作業するケースも近年多くなっている。従業員12人のうち、現場作業者は8人体制で労働負荷が高まっているが、多能工化を進めて繁忙を乗り切っている。年齢構成は20~60代と幅広で、来年4月にもベテランが定年を迎えるため、スムーズな技術継承のために今年2人の新人を迎え入れた。

 山梨工場で生産している屋根と一体化した雨樋の新製品「元旦内樋」は軒先がシャープで見た目が美しく、全社的にも販売に注力。今後は西日本でも本格的に販売する計画で、岡山工場でも生産する可能性があるという。2015年の同社50周年時に発表した内外装材「元旦くろす50」も市場投入から数年が経過し、出荷量が伸びてきたことから、競合ひしめく西日本地区での拡販の武器としたい構え。

 4万平方メートルの敷地の一角に2011年、金属屋根マイスターの研修棟を新設した。金属屋根のスペシャリストを養成するマイスター制度は、同社の施工協力会社で構成する全国組織・全国元旦会が運営。岡山では白州技術センター(山梨県北杜市)から講師を招き、基本的に年2回、3日間の研修期間を設けて板金技術者が実地講習を含め屋根張り技術を高めている。

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