TSURI HACK × LURE X
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今回は「バラシの原因と克服レッスン」。アングラーでにとって「最悪の結末」ともいえる、この厄介な現象について迫ります。
辺見 哲也
東京湾ボートシーバスの“伝説のカリスマガイド”として名を馳せ、現在は岸からのキャスティングゲームでも活躍するシーバスエキスパート。
多彩なキャスト技術を持ち、どんな状況でも狙ったスポットを正確に撃ち抜く、キャスティングの名手としても知られている。
バラシの原因はポンピングにあり。正しく矯正すれば釣獲率が大幅アップ!
バラシにもいろいろあるけど、最も多いのは……
バラシの要因はいくつかある。ラインブレイクに始まり、結びが抜けるスッポ抜け。掛かりどころが悪かったり強めにヤリトリしすぎてフックが伸びるケース。
そしてハリの掛かりが浅く、いわゆる皮一枚の状態でファイトした場合に起きる身切れ……。
私の経験上、そういったもののうち最も多いのがフックアウトだと思う。いわゆる釣りバリが魚の口からポロッと外れてしまう現象だ。
カエシの付いたフックは簡単には抜けないハズなのだが、なぜかポロッといく。
自信満々でファイトするアングラーがこれ見よがしに披露する強引なファイトでは特に起こりがちだ。必要以上に魚へ負担を掛けるため、ハリが刺さった部分の身が裂けてハリ穴が広がるからだ。
これではせっかく刺さったハリも抜けやすくなってしまう。コマーシャル要素満点の強引なファイトをすれば、バラすのは当然と言えよう。
掛けた魚をより確実にキャッチしたいと考える賢明なアングラーの皆さんには、これからバラシ撲滅のヒントを解説していこう。
魚がバレる最大の要因はテンションの緩みと知ろう
現代のルアーフィッシングはPEラインが主流であるが、実はこれこそがバラシにおける最大の要因だ。
しかしながら、飛距離・感度・強度と三拍子そろったPEラインを除外することは考えられない。多大な恩恵を授かるのも事実だし、私もかれこれPE派として20年も活動してきた。
一点だけデメリットを挙げるとするならば、PEには柔軟性がないのでファイトに神経を使う。
ナイロンラインのようにショックアブソーバーとしての機能はしてくれない。ラインに伸びがないため、緩んだときはテンションが0になりやすい。
すなわちこれがバラシの要因だ。ただし、これはアングラーの技量と道具で補うことができる。
ロッドを起こして魚を寄せ、その分のラインをリールで巻き取る……は間違い。トップの位置で「さあ巻くぞ!」と力を込める直前にフックアウトの憂き目に。
まずは道具から考えてみよう。ロッドは長くて軟らかいものを選ぶ。例えば磯の上物釣り用のようなものを使うことで、緩衝のストロークが長く取れる。
ラインに伸びがない分ロッドが追従してくれれば、ナイロンラインの使用時ほどではなくても多少は解消できる。
次に技量としては、ドラグを緩めに設定しポンピングをせずリールをひたすら巻き続けて寄せる。
つまりヤリトリはリールのドラグに一任してしまうのだ。その極端な例が、管理釣り場のファイト。ロッドとラインを真っすぐにし、ライフルのような構えでグリグリ巻いてくる。
トーナメントで多用されるこのゴリ巻きが、最も魚をバラさないテクニックといえよう。
これぞプロのレッスン。 魚をバラさないファイトを実践してみよう
それでは、ラインテンションを抜かないファイトを解説しよう。
まずは“オフィスヘンミ”で開発したバラシ矯正マシン「バラサン2号」を準備。本誌(ルアークロス)記者に体験してもらいながら、「バラシ撲滅レッスン」を行っていこう。
タックルは私が愛用している『エクスセンスS910M/R』に『ステラ4000』、ラインは『ピットブル12』の1.2号に『エクスセンスリーダーEXフロロ』の25ポンドでテスト。いつもシーバシングをしているメインタックルだ。
早速バラサン2号に1.25キロのウエイトを乗せ、砂利の広場で40メートル離れた場所から手元まで寄せる。フックアウトしなければ合格だ。
一見簡単そうだが、実はフックに細工を施している。ハリの先端をカットし、ゲイプ部分にオモリを装着。テンションが緩んだ途端、重力によってオモリが引っ張られ外れてしまうというシロモノ。
さぁ、トレーニングの開始。まずは何も言わずにトライしてもらうと、10メートルも寄せられずにフックアウトした。もくろみ通りの結果である。
バラサン2号に付いた“足”が所々で砂利に引っ掛かり、リールだけでは寄せきることができない。瞬間的にはドラグに5キロもの負荷が掛かるため、ロッドで引き寄せる必要がある。
【アドバイス1】バラさない最大のコツはリーリングにあった
「ポンピングをする際も常にリールは巻き続けること」
テンションが抜けやすいのは、ロッドを倒したり起こしたりするタイミング。そのときにリールを巻き続けていれば保たれる。意図的にリールでテンションの抜けをカバーするわけだ。
最もテンションが抜けやすいロッドの動きが止まるところをリールでテンションを保つことにより、2回目からは難なく寄せられるようになった。そう、リールを巻き続ければバラシは大幅に減らせるのだ。
なお、前提としてドラグ設定がきちんとなされていることが条件。この場合は2キロが適正で、それより弱いとロッドを起こしても相手に負荷を掛けられない。
【アドバイス2】タックルバランスで難易度がこんなに違う
これとは別に、そもそも「対象魚に見合ったタックルバランス」も重要だ。試しに、同じ1.25キロのウエイトを積んだバラサン2号をビッグゲーム用の『オシアプラッガーBG』でトライしてもらった。
極端に硬いロッドなので、バラサン2号を引き寄せるのは楽だ。しかし曲がらないのでテンションが抜けやすい。結果的にフックアウトを連発することとなった。
対象魚に対し、極端に硬いロッドではファイトが難しくなる。
そして最後に『エクスセンス910M/R』に戻し、今度はナイロンラインの2.5号でトライしてもらう。すると非常に安定したファイトが可能となった。
不整地で暴れるバラサン2号の動きを、ラインの伸びが吸収してくれる。極端なポンピングをしてもフックが外れることもない。
ナイロンラインがいかに安心してヤリトリできるか、改めて確認できた。
ナイロンラインでのファイトは、まるで“吸い付く”よう。瞬間接着剤で止められているかのような、何をやっても外れる心配がなかった。
レンタルタックルにナイロンが多いのもうなずける。ただ感度の悪さには愕然とする。ガタガタ道の振動はほとんど手元に伝わらない。
ロッド:エクスセンスS910M/R
リール:ツインパワーXD C3000XG
ライン:ナイロンライン2.5号
「それじゃ〜ナイロンラインを使えばいいじゃん!」との声も聞こえてきそうだが、やはり感度と飛距離で圧倒的なパフォーマンスを発揮するPEは外せない。
テンションが抜けにくいバランスタックルにし、それに応じたファイトをマスターすることが、多くの魚との出会いを実現する。
これを機に、いま一度自分のタックルとファイトを見直してはいかがですか?
※本記事はシマノ社「LURE X」より、一部内容を変更して転載しています。