県議の政活費不正受給、県が逆転勝訴 知事に返還義務なし

 元県議会議長の中村省司県議(73)=鎌倉市=の政務活動費(政活費)に不正な受給があったとして、県知事が当時の所属会派・自民党県議団に返還を請求しないのは違法との確認を同市の男性(65)が求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(菅野博之裁判長)は16日、知事の対応を違法と認めた二審東京高裁判決を破棄し、男性の請求を棄却した。男性側の逆転敗訴が確定した。

 

 一方、中村氏の不正受給については、一審、二審判決を踏襲して認めた。三たび司法に糾弾された形の中村氏は「詳細は把握できていないが、県民、県、自民党県議団に深くおわびする。二度とこのようなことがないよう身を引き締め、いっそう努力していく」とコメント。同僚県議からは責任を問う声も上がっており進退が注目される。

 上告審では、政活費の不正受給があったにもかかわらず、知事が会派に返還請求しないことの妥当性が争われた。知事側は「不正分を控除してもなお、会派から届け出のあった支出総額が政活費の交付総額を上回る場合、返還を要しない」と主張していた。

 判決は県の政活費条例について、「支出総額が交付総額よりも多い場合、支出のどの部分に政活費を充てるのか明らかにすることは求めていない」と指摘。仮に不正があったとしても、そうした制度上、適正な支出分が交付総額を下回らない限り、会派が政活費を不当に取得したとは言えないとの判断を示し、知事側の主張を全面的に是認した。

 判決によると、中村氏は2011~13年度、戸別配布用の広報資料「県政レポート」を計11回発行したとして、印刷代に相当する計約518万円の政活費を同県議団を通じて受給、領収証などを会派に提出した。しかし印刷代としての支出は実際には存在せず、領収証は偽造されたものだった。

 判決を受け、男性は「結果に対して納得できないし、残念だ。不正受給が認められた中村氏はお金を返さず、議員辞職もしていない」と批判。黒岩祐治知事は「県の主張が認められ、適切な判決だと考えている」とコメントした。

神奈川県庁

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