「イチローが教えてくれた」―MLB選抜捕手が明かす姿勢、準備、楽しむこと

マーリンズで同僚だったリアルミュートとイチロー(左から)【写真:Getty Images】

マーリンズ捕手リアルミュート、ナゴヤドームで“再会”「記念に写真を撮ったんだ」

「2018日米野球」で来日したMLBオールスターチームのJT・リアルミュート捕手(マーリンズ)が、第5戦、第6戦が行われたナゴヤドームで元チームメートのイチローとの“再会”を喜んだ。再会、とは言っても、それはイチロー本人ではなく、レフトスタンド上方に掲出された特大広告。イチローの顔が大々的にフォーカスされた広告看板を指差しながら「あそこにイチがいたから、記念に写真を撮っておいたんだ」とうれしそうに笑った。

 イチローとは2015年から3シーズンにわたりチームメイトとして戦った。イチローと言えば、子供の頃にテレビで見ていたレジェンド。他の選手から、イチローの野球に対するストイックなまでの姿勢について聞いたことはあったが、実際に目の当たりにした時は「本当に驚いたよ」と目を丸くする。

「彼の野球に対する姿勢を見て、大きな影響を受けた。日々の準備の大切さ、練習の大切さを教えてもらった。正直なところ、あんなに練習するとは思わなかったんだ。いつ何時、出番がやってきてもいいように、先発する日もしない日も、同じように準備をする。彼ほどのレジェンドになっても、若手と変わらず準備し続ける姿に、本当に驚かされたよ」

 そしてもう1つ、イチローから学んだ大切なことがある。それは、勝負を楽しむことだ。

「イチローはそうじゃないってことを教えてくれた」

「好きだった野球が仕事になると、いいリードをしなければならない、打たなければならない、盗塁されてはいけないって、すべてが義務のような形になってしまう。自分で変にプレッシャーをかけていた部分があるんだ。でも、イチローはそうじゃないってことを教えてくれた。野球をプレーしている時は、1つ1つの勝負を楽しむこと。子供の時に真剣に勝ち負けを楽しんだ、あの感覚を持ち続けるべきだって。仕事になっても、野球は好きでやっているんだから」

 今回、日米野球に参加したのも、イチローや田澤純一ら日本人選手とチームメイトになり、少なからず日本の文化に興味を抱いたことも1つの理由だ。中西部に位置するオクラホマ出身の27歳。もし野球をやっていなければ、ここまで日本との接点はなかったかもしれない。

 そして、これもまた運命の巡り合わせか。敬愛するイチローが生まれ育った愛知で、侍ジャパンと対戦するチャンスも得た。イチローが名古屋近郊で生まれ育った話を聞くと「ここが彼の故郷だったとは。ナゴヤドームにいるイチローの写真も撮ったし、次回会った時には『君の故郷に行ってきたよ』って報告するよ」と満面の笑みを浮かべた。

 約10日間の日本滞在を終え、帰路に就いたリアルミュート。今オフもトレード市場で大きな注目を浴びており、帰国した途端に周囲は騒がしくなるはず。だが、イチローの足跡に触れた思い出は、決して忘れぬものになるだろう。(Full-Count編集部)

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