競泳金メダリスト・萩野公介、“北島康介と過ごした1ヵ月”が大きな転機に…

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藤木直人、伊藤友里がパーソナリティをつとめ、アスリートやスポーツに情熱を注ぐ人たちの挑戦、勝利にかける熱いビートに肉迫するTOKYO FMの番組「TOYOTA Athlete Beat」。10月27日(土)の放送では、競泳日本代表の萩野公介選手が登場。肘の手術などの逆境を乗り越えてきた彼の競技人生に迫りました。

写真左から藤木直人、萩野公介、伊藤友里

萩野選手は高校3年のとき、2012年ロンドンオリンピックに出場し、400m個人メドレーで銅メダルを獲得。2016年リオデジャネイロオリンピック(以下、リオ五輪)では金銀銅と3つのメダルを獲得しました。2017年に大学を卒業し、プロへと転向。現在はブリヂストンに所属しています。

◆「リオ五輪のとき肘はパンパンに腫れていた……」

藤木:2015年の合宿中に自転車で転倒してケガをされましたが、大きな影響はあったんでしょうか?

萩野:骨折をしまして……そのとき手術はしなかったんですけど、リオ五輪のあとに手術をして。気持ちもそうですし、自分の体としても大きな転機になった出来事の1つかな、と思っています。

藤木:すぐに手術をせずに泳いでいくなかで違和感みたいなものがあったんですか?

萩野:ケガをしたところを手術してしまうと本番に間に合わないかもしれないということで、手術は回避したんです。そのあと、リオ五輪のときも肘はパンパンに腫れていたんですけど、なんとか乗り越えることができて。2020年東京オリンピック(以下、東京五輪)があるなかで「4年はちょっと肘がもたないな……」と思い、周りの邪魔な骨を切除する手術をしました。

伊藤:手術後の経過はいかがですか?

萩野:最初はふわふわした感じというか、1度体にメスを入れるとバランスがちょっと崩れるので、自分のなかでもやりにくいなっていう感覚があって。最近になって、肘も自分の体の一部になっている感覚になり、ようやく慣れてきたかなっていう感じがします。

藤木:それまで泳いでいたときの感覚に戻ったわけではなく、ケガや手術を受け入れながら新しい泳ぎに変えていったということですか?

萩野:そうですね。同じ泳ぎ、同じ体にはもうならないので、今のなかでどういう泳ぎがベストなのかを考えながら進めています。

藤木:そうした逆境のなか、平井伯昌コーチの支えというのはやはり大きかったですか?

萩野:大きかったですね。リオ五輪の前に怪我をしたので、やはり練習ができない時期もありましたし。“大丈夫かな!?”って自分自身不安になる部分もあったんですけど、「大丈夫だ。俺が絶対良い結果を出させてやる」っておっしゃってくださって、平井コーチについていこうと思いました。実際にレースの直前では「やってこい!」と言われて、その言葉がやっぱり一番うれしくて、やる気が入った状態でレースに臨むことができました。だからこその結果だったのではないかな、と思っています。
それまで泳ぐことは技術だけ上げればいいと思っていたんですけど、やはりそうではなくて泳ぐ前のメンタルやどういった気持ちで試合に臨むかということが、技術よりも大きな部分かもしれないと最近は思っています。そういった部分をサポートですとか、常日頃いろんな話をしながら相談をして、レースに臨むことができているので、ものすごく大きな存在として力になっています。

藤木:レースに臨む心境はどのように変化したんですか?

萩野:前までは1人で泳いでいる気がしていて。自分の泳ぎをするのはすごく大事なことなんですけど、やっぱり誰かのために泳いだりとか、「リオ五輪の前には平井コーチにメダルを獲らせたい」という思いで泳いでいました。1人だけでやると4年に1度のプレッシャーに押しつぶされてしまうので、そのなかで平井コーチやチームのみんなの存在があるからこそ、がんばれているのかなと思います。

◆すごく大きかった“北島康介”という存在

藤木:所属はブリヂストンですが、マネジメント会社は北島康介(元競泳選手・五輪金メダリスト)さんが社長なんですね。やっぱり北島さんの影響も大きいですか?

萩野:ものすごく大きいです。自分自身、大学を卒業してどのように水泳を続けていこう、どうやって東京五輪を戦っていこうかと考えたときに、2016年の4月にリオ五輪の選考会があって。その直前の2月から3月にやったスペイン合宿で、北島さんと最後の1ヵ月を同部屋で過ごさせていただいたんです。その間にいろんな話をしていただいて、それも自分にとってものすごく大きな転機の1つでした。北島さんからいただいた言葉を自分でよく考えてみて、水泳というものを価値あるものにしたいと思って、自分も精一杯がんばっていきたいと決めました。競泳でプロ選手は、いままで北島さんしかいらっしゃらなかったので、北島さんにしかわからない心境の部分とかもあったと思いますし、そのなかでかけてくれる言葉っていうのはすごく大きかったですね。

藤木:そんななか迎えたパンパシフィック水泳選手権大会 2018、そしてアジア大会2018ジャカルタでの結果は、どのように受け止めていますか?

萩野:僕自身、2017年はすごくもがいて苦しんで終わってしまったので、今年は何か掴んで終わりたいなって思っていたんです。パンパシ水泳2018とアジア大会2018ジャカルタが終わって、レースのなかで自分自身をコントロールして。良い泳ぎやレース展開など、昨年できなかったことができるようになったと思います。ケガをしたあとに焦ってしまってあまり良くない時期があったんですけど、そこから泳ぎも安定してきて、普段の練習でできていることを活かしてレースに臨むことができました。満足する結果ではなかったですけど、僕自身、全力を出し切った結果だと思っています。

藤木:現在、日本代表でキャプテンをつとめていて、自身のケガとの戦いのなか代表を引っ張っていくというのは大変だと思いますが。

萩野:昨年、ハンガリーで世界選手権があって、リオ五輪のときも男子キャプテンではあったんですけど、本当のキャプテンは金藤理絵さん(元競泳選手・2018年3月に現役引退)がやっていたので、僕自身、全体のキャプテンをやるのは昨年が初めてだったんです。プレッシャーで調子も悪くて結果も出ていないし、リレーでも良い結果が出なくてみんなの前で泣いてしまって……。あとで平井コーチから「あれは良くない」って言われたりもしたんですけど(苦笑)。僕がキャプテンではあるんですけど、今年はチームのみんなに引っ張ってもらったり、お互いに力を共有できたっていうのがすごく大きかったですね。

藤木:苦しいときに気持ちを維持する方法はありますか?

萩野:苦しいときというのは、あまり結果が良くないときだと思うんですけど、僕はできないことがたくさんあることを“伸びしろ”と捉えるようにしています。「やることがいっぱいだな!」って。
<番組概要>
番組名:TOYOTA Athlete Beat
放送日時:毎週土曜 10:00~10:50
パーソナリティ:藤木直人、伊藤友里
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/beat/