「は~」「ブオー」“銭湯女子”と「激渋」湯巡り 神戸・長田

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神戸の銭湯女子のおおたみちゃんこと太田美波さん=長田区東尻池町4

 下町を体感するならやっぱり銭湯へ! 阪神・淡路大震災前まで約50軒がひしめいた「銭湯王国・長田」。震災で大きな被害を受け、県公衆浴場業生活衛生同業組合に所属するのは現在12軒と激減したが、それでも神戸市内最多を誇る。自称「神戸の銭湯女子」、イラストレーターのおおたみちゃんこと太田美波さん(23)と一緒に女子目線で長田の銭湯を巡ってみた。(石川 翠)

 「どうせなら『激渋(とても渋い)』な銭湯に行ってみたい」と訪れたのは、今もまきでお湯を沸かす「戎湯」(東尻池町4)。ボイラーが主流となり、まきを使うのは市内39軒中、わずか3軒ほど。かなりレアだ。店舗裏の釜場に案内してもらい、釜の扉を開けると熱風が襲ってきた。

 「朝から晩までほとんど釜の前で火の調整をしてます」と店主の小原和次さん(52)。5年ほど前に父親の後を継いだ。冬場は週3日、軽トラで市内の材木店を回ってまきを回収。釜に空気を送るよう風を吸い上げるための煙突(高さ20メートル)も健在だ。浴場は震災でひび割れるなどしたが、煙突は難を逃れたという。

 浴場内はシンプルな湯船が大小二つ。お湯につかり思わず「は~」。ちょうどいい湯加減。この温度調整を手作業でしているなんて! 感動ものだ。

 おおたみちゃんはというと、何やら湯船の側面をじっと見つめている。「タイルの形と色がレトロでかわいい」。小さな長方形のワインレッド色のタイルが湯船のへりに敷き詰められている。「他では見ないようなタイルばかり」。インスタ映えでも撮影はNG。

 全身がホカホカしたところでお風呂を上がり脱衣所へ。着替えをしながら2人の目線はあるものにくぎ付けになった。お釜ドライヤーとマッサージチェアだ。

 ドライヤーは、椅子に座り、お釜をすっぽりと頭にかぶせると、「ブオー」という音とともに髪の毛が上方に巻き上げられた。「長時間やりすぎると髪が角のようになりますよ」と番台に座っていた小原さんの妻美香さん。チェアは側面のハンドルを回して自分で高さを調整。こぶし大の突起が絶妙なテンポで押したりもんだりしてくれる。

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 約200メートル西に「浜添湯」(浜添通1)があると聞き、銭湯をはしごすることに。戎湯と似た造りだが、異なるのは石畳に石の湯船。「戦前からあるもので…」と番台から店主が教えてくれた。つるっとしたタイルもいいが、少しざらっとした重みのある石に肌が触れると不思議と落ち着く。

 湯船につかりながら、おおたみちゃんが銭湯女子になった経緯を聞いた。「腹が立ったことがあって、偶然銭湯に行ったら、心も体もスゥーと落ち着いたんです」。以来、仕事帰りに銭湯に通い始めたという。

 「頭を無にして全身に血が巡るのを感じる」。熱い湯船と水風呂を往復して長時間入り続ける“ベテラン”の動きを見てまねすることもあるという。

 ちなみにここのマッサージチェアは前のめりになりそうになるほどかなり強め。ここにも個性が…。