地球市民集会開幕 「核廃絶大きく後退」 被爆者の築城さん 政府姿勢にも落胆

 長崎市で16日開幕した「第6回核兵器廃絶-地球市民集会ナガサキ」。開会集会の「被爆者の訴え」に登壇した同市の築城昭平さん(91)は、日本政府が2016年に核兵器禁止条約制定交渉に反対し、その後も賛同していないことに対して「被爆者をどんなに落胆させ、悲しませたかを政府は感じているのだろうか」と訴え、核軍縮が進まない現状へいらだちをあらわにした。
 築城さんは18歳の時、爆心地から1・8キロの長崎師範学校の寮(文教町)で睡眠中に被爆、全身から出血した。その後3カ月間、やけどや病気の治療のため病床に伏した。
 被爆直後には、大やけどを負い、体の皮膚が垂れ下がった「まるで幽霊のような」人々の姿を目にした。周囲は「変なにおい」に包まれ「世の終わりを思わせた」と振り返った。
 戦後、核保有国が増え、核兵器の性能が向上する情勢を憂い、核廃絶を訴えたり抗議の座り込みをしたりしてきた築城さん。「私が一貫して主張しているのは核兵器の即時全面禁止だ」と力を込めた。
 米国が核拡散防止条約(NPT)に基づく核軍縮に逆行した動きを見せ、旧ソ連との中距離核戦力(INF)廃棄条約も破棄する方針であることに「核廃絶は大きく後退した。この先どうなるのか」と不安を吐露。「核抑止論に取りつかれた国が北朝鮮に核廃絶を要求するのは矛盾だ」と強く批判した。
 一方で、核兵器の開発、保有、使用などを全面禁止する核禁止条約が17年に国連で採択されたことについては「核保有国任せでは核軍縮は望めないという強い危機感からできた。被爆者を勇気づけた」と高く評価した。
 開会集会では、田上富久市長らのあいさつや、宗教各派が合同で平和活動に取り組む県宗教者懇話会による「祈りの時間」などもあった。

壮絶な被爆体験を語る築城さん=長崎市平和会館

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