【漢字トリビア】「勤」の成り立ち物語

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「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「勤務する」「勤める」の「勤」。「勤労感謝の日」を前にひもといてみたい字です。

「勤」という漢字の旧字体の、むかって左側は「堇(キン)」と呼ぶ会意文字で、音も表しています。
この部分に関しては、さまざまな解釈があります。
この旧字体ではまず、上から順に動物の頭を、その下に火と土が描かれています。
燃やされた動物の骨のように乾いた土のことを表している、という説。
これは、水分を出し尽くした様子を意味しています。
隣に添えた「力」という字は、田畑を耕す「鋤(すき)」と呼ばれる農具の形を表す象形文字。
このふたつを組み合わせることで、余力がないほど力を出し尽くす、懸命に働く、励むことを意味すると読み解きます。

独自の視点で漢字のなりたちをひもといた白川静博士は、「勤」という字の左側、「堇」の部分を人の形に見立ています。
しかもこれは、日照り続きのため、自分のからだを燃やして神への祈りを捧げ、雨を願う巫女の姿を表しているといいます。
乾ききった土、燃え盛る火。
祝詞を入れる器を頭にのせた巫女は、自らの肉体を炎に投じ、煙となって天界に昇ってゆきます。
それは、命懸けで勤めを果たそうとする人の姿。
その隣に「力」という文字を添えて、飢饉に見舞われないよう、農耕に励み努力する、という意味をもつというのです。

ではここで、もう一度「勤」という字を感じてみてください。

十一月二十三日は勤労感謝の日。
「勤労を貴び、生産を祝い、国民が互いに感謝しあう日」です。
この祝日はいにしえから行われてきた、「新嘗祭」と呼ばれる祭祀がもとになっています。
天皇陛下が宮中の神嘉殿(しんかでん)において、天皇家の祖先や神々に今年収穫した穀物をお供えし、感謝をささげたのちに、陛下自らもお召し上がりになる祭典です。
冷え込みが厳しくなるこの時期に重たい装束を身に着け、ご自身のお言葉どおり「全身全霊」で儀式にのぞまれてきた陛下。
心身共にご負担の多い祭祀は、「勤める」という文字のなりたちにひそむ厳しさを思わせます。
勤労感謝の日は、あらゆる場所で働くすべての人と、あなた自身にも、感謝と労りの気持ちををお忘れなく。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。
その想いを受けとって、感じてみたら……、
ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献
『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)
『漢字の気持ち』(高橋政巳、伊東ひとみ/著 新潮文庫)

11月24日(土)の放送では「綿」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。


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<番組概要>
番組名:感じて、漢字の世界
放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット
放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜7:20~7:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)
パーソナリティ:山根基世
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/