【大学野球】秀岳館で4季連続甲子園 立教大・川端健斗の現在地「自分の力出し切れなかった」

立教大での1年目を振り返った川端健斗【写真:沢井史】

立教大での1年目は春秋通じて13試合に登板し3勝2敗

「まだまだ自分の力は出し切れなかったです」。

 立教大の投手、川端健斗はルーキーイヤーだった今年1年の自分のマウンドをこう振り返った。春と秋、計13試合に登板し3勝2敗。ルーキーとしてはまずまずの成績だったが、高校時代の経験値から見ると決して満足のいくものではなかった。

「リーグ戦ってすごく長いイメージがあったんですけれど、春、秋のリーグ戦はあっという間でした。ただ……良いピッチングが出来た試合があっても続けてそれができなかったことが一番悔しかったですね」

 熊本・秀岳館高では2年春から4季連続で甲子園を経験し、うち3度でベスト4に進出した。4季で通算11試合に登板し、48回2/3を投げ57奪三振。3年次は田浦文丸(現ソフトバンク)とのダブル左腕でマウンドを分け合い、ともに侍ジャパンU-18にも選出された。

 高校時代は最速148キロの速球派左腕として鳴らした。大学でも春のリーグ戦開幕前に行われる社会人野球チームとの対抗戦で146キロを計測。ただ、球威が決して落ちている訳ではなかったのに、どうもしっくりこない。

「高校の時は力を入れて思い切り投げればある程度スピードが出ていたんですけれど、大学になると速い球を投げられる頻度も減ったし、なかなかそれ以上の球速が出なくて」

 スピードのことばかりを気にしすぎて、自分のピッチングを見失いかけたこともあった。それでも春のリーグ戦ではローテーションを守って7試合に登板。期待通りの躍動に周囲からは「さすが」という称賛の声が聞かれたが、当の本人はずっと首をかしげていた。

 そんな中、秋のリーグ戦を前にした夏のキャンプを迎える前に春のリーグ戦の自身の反省点を挙げていくと、大きなテーマが浮かび上がってきた。「高校では仮に四球でランナーを出しても、三振をどうにかすれば取れて、ピンチを抑えられる。でも大学ではそうはいかない。そもそも簡単に三振が取れる訳はないので、ならば打たせて取るピッチングをもっと身につけないと、と思いました」。

刺激を受ける法大・三浦、明大・武田ら同級生の存在

 春のリーグ戦前に2年上でエースの田中誠也(大阪桐蔭)との会話を思い出した。

「実は入学前から一番気になっていたのが誠也さんの存在でした。同じ左だし、甲子園で実績もある。実際、練習からの姿勢や、試合の作り方……誠也さんはすべて見習うところばかりです。誠也さんのストレートはスピードがなくても、キレが良くて空振りが取れる。どうやってそんなストレートを投げているのかな…とずっと思っていて、ブルペンが隣だった時にたまたま誠也さんとその話になったんです。そうしたら、リリースの感触を見ながら投げているって聞いて。単に腕を振るだけではなくて、リリースから見直していかに厳しいコースに投げられるかを考えるようになりました」。

 ブルペンではリリースの位置を意識しながら、ストレートで何割ストライクを取れるか、カウントを取れる変化球を磨くことに努めた。秋のリーグ戦では力の入れ具合を見ながらストレートを投げていくと、リーグ戦序盤で一時的に四死球が減った。もともと制球にばらつきがある方だったため、何かを掴んだ気がした。

「四球を出すピッチャーは、周りから見ても守りづらいし(指導者からも)使われにくい。ただ、四球が減ったのは一時的なので続けられないところが今の自分の課題です。スピードにとらわれるのではなくて、いかにキレのあるボールをコントロール良く投げられるか。それができるようになれば自然と腕が振れてスピードもついてくるはずなので、まずは球質を上げていきたいです」

 何より同じ1年生で活躍した法政大の三浦銀二(福岡大大濠高)、明大の竹田祐(履正社)らの活躍が大きな刺激になっている。特に三浦とは昨秋の侍ジャパンU-18として、共に世界の舞台で戦った間柄だ。「銀次とは九州大会でも投げ合ったことがあったんですけれど(高校2年秋に九州大会準決勝で対戦)、ストレートはキレがあるしコントロールはいいし、完全に抑えられました(0-5で敗戦)。銀次は普段はすごく優しいし穏やかなんですけれど、マウンドに立つと人一倍負けん気が出ます。この秋のリーグ戦でも投げ合ったんですけれど、やっぱりあのストレートは違いました。ただこの秋、打席に立った時、自分は意地でヒットを打ちましたけれどね」と笑った。

 一足先に全国の舞台に立ったライバルの背は先にあるが、決してネガティブにはなっていない。むしろ、自身の活路を見いだせたことでモチベーションは一層上がっている。「この冬の時期は課題を潰すことだけです。来年は誠也さんが1戦目に投げて、自分が2戦目を任せてもらえるようになりたいです。同級生にもこれだけ切磋琢磨できるライバルがいるし、レベルの高い打者の多いリーグなので、良い環境で野球をやらせてもらっています。今年はこれだけ経験をさせてもらったので、さらに期待はされると思いますが、来年こそは自分の納得のいくシーズンにしたいです」。今季を布石にし、期待を超える躍動を―。真価が問われる2年目のシーズンに向け、川端の“長く濃い冬”が幕を開けようとしている。(沢井史 / Fumi Sawai)

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