個性拡がるラインナップがいよいよ完成! 新世代ボルボ SUVを徹底評価|XC40・XC60・XC90 3台比較

(手前左)ボルボ XC40 T4 モメンタム(FF)/(右)ボルボ XC60 D4 AWD インスクリプション(4WD)/(奥)ボルボ XC90 T6 AWD インスクリプション(4WD)

ボルボ家のSUV3姉妹、いずれも個性溢れるキャラクターを徹底紹介

2015年にワールドプレミアとなったXC90にはじまるボルボの新世代SUV3姉妹は、世界的に大好評だ。

日本においては2016年に長女のXC90が上陸してあまり顔ぶれに変化がなかったプレミアムSUVのクラスに刺激を与え、2017年には次女のXC60がデビューを飾って日本カー・オブ・ザ・イヤーを獲得し、今年2018年には末娘のXC40がストリートを元気よく走りはじめ、視線を集めている。XC90はさすがに価格も手頃とはいえないし上陸から少し時間も経ったから以前より落ち着いてはいるけれど、それでもデビュー以来変わらず安定して売れ続けているという。XC60はいまだに納車まで半年待ちに近い状況が続いてるし、XC40もオーダーしてからキーを手にするまで6~7ヶ月待たなきゃならない、といった人気ぶりだ。

そうなるのも然り、だと思う。だって3姉妹は、まず姿がいい。品がいい。センスがいい。ヒトに対して優しいし、インテリジェンスだって持ち合わせている。立ち居振る舞いはしなやかだし、運動神経もなかなかのもの。揃いも揃って皆そうなのだ。僕も「つきあってください!」と告白する列に並ぶひとりになりたい、と思うぐらいである。

ボルボ XC90 T6 AWD インスクリプション(4WD)
ボルボ XC40 T4 AWD インスクリプション(4WD)
ボルボ XC60 D4 AWD インスクリプション(4WD)

けれど、似て異なるのが姉妹というもの。ボルボ家のSUV3姉妹も、それぞれしっかり個性を持って生まれてきている。XC90のそのまんま縮小版がXC60というわけじゃないし、XC40の大きなラグジュアリー版がXC90というわけでもない。3台を並べてみるとスタイリング・デザインが思いのほか違ってることがありありと判っておもしろいぐらいだし、乗り較べてみると明確にテイストが異なっていて感心させられるほどなのだ。

せっかくの機会なので、ここはひとつ、それぞれのキャラクターを皆さんにシッカリと知っていただきたいと思う。

清楚系な長女「XC90」誕生が全てのサクセスストーリーの始まりだった

ボルボ XC90 T6 AWD インスクリプション(4WD)

まずは長女から。XC90はボルボSUVのフラッグシップ的存在であり、価格が789~1084万円と最も高価なモデルでもある。車体も最もたっぷりとしていて、全長4950mm、全幅1960mm、全高1760~1775mmと威風堂々のサイズ。その豊かな体躯を巧みに活かしたスタイリング・デザインは、シンプルでプレーンな線と面で構成される大人っぽい雰囲気のもの。3車の中で最も強くエレガンスを薫らせてる。

華美な装飾を極力抑えながらのこの上質な雰囲気作りは、そのままデザイン力の高さを証明してるようなもので、素直に“上手いな……”と唸らされる。SUVは元がクロカン由来という先入観的なイメージもあって、どこか無骨さを意識されられるクルマも少なくないが、その対義にある“洗練”という言葉の意味を最も強く視覚から感じさせてくれるのも、このXC90というクルマだと思う。

たっぷりしたボディ・サイズは、そのままたっぷりした居住空間に活かされている。前の2つのシート周りも2列目のシート周りも、何ひとつ気になることなく自然と寛げてしまうくらいに広々。また3姉妹の中で唯一3列目シートを備えていて、後部にそれぞれ独立したそのふたり分のシートも、2列目のシートを少し前にスライドさせたりすれば、大人でも思いのほか快適に過ごせてしまう。7人乗りということもあり、ファミリーで使うユーザーも多いようだ。

ボルボ XC90 T6 AWD インスクリプション(4WD)
ボルボ XC90 T6 AWD インスクリプション(4WD)
ボルボ XC90 T6 AWD インスクリプション(4WD)

ボルボのラインナップで最も上級に位置するクルマでもあるから、インテリアも、それはそれは贅が凝らされた空間だ。素晴らしいなと感じるのは、そうでありながら微塵もこれみよがしなところがないこと。目に入る大部分はウッド・パネルとレザーで覆われているが、色調のトーンやバランスなどが絶妙で、いわゆる“ケバさ”とは対極にある抑制の効いた華やぎを見せている。ところどころにあしらわれるアクセントとしての金属パーツや機能的に不可欠な樹脂パーツにも安っぽさはなく、それらを含めた異素材同士の組み合わせ方にも矛盾や違和感というものがない。

ダッシュボードのデザインは滑らかな横方向の線を基調にしたシンプルなもので、数多くの装備類の操作は“SENSUS(センサス)”と呼ばれる9インチのタッチスクリーンに集約されるため、スイッチ類やボタン類があまり目につかない。結果、全体的にしっとりと落ち着きのある上質な空間に感じられるのだ。

それらを形作ったり包み込んだりする基本骨格は、このXC90から採用された“SPA(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー)”という、剛性と安全性の大幅な向上、そして電動化や自動運転を視野に入れた、ミドル・クラス以上の新世代ボルボのために新開発された新しいプラットフォームだ。駆動は電子制御式のAWD。最上級モデルには標準で、それ以外にはオプションで、“FOUR-C”と名付けられた電子制御式のエアサスを軸にしたアクティヴ・シャシー・システムが用意される。

搭載されるパワーユニットは全て2リッターの4気筒で、ターボ付きの254ps/350Nmの『T5』、ターボ+スーパーチャージャー付きの320ps/400Nm仕様の『T6』、ターボ+スーパーチャージャー+電気モーターの318ps+99ps/400Nm+240Nm仕様のPHEV(プラグインハイブリッド)『T8 Twin Engine』という3タイプ、トランスミッションはいずれも8速ATとの組み合わせとなる。またPHEVモデルはバッテリー搭載位置を車体の中央にしたため、荷室や3列シートの配置にも影響を与えていないことも、実は特筆しておきたいポイントだ。

──と、ちょっとばかり長々と説明をしてきたのは、やはり全てがこのモデルから始まっているため。姉妹だけあって、妹達が姉から譲られたモノを持っていることも多く、ここで知っておくと妹達を理解しやすくなるからだ。

優雅な走りはまさに”プレミアムクルーザー”の世界

ボルボ XC90 T6 AWD インスクリプション(4WD)
ボルボ XC90 T6 AWD インスクリプション(4WD)
ボルボ XC90 T6 AWD インスクリプション(4WD)

話を戻してXC90の乗り味はどうかといえば、ひと言で表すなら優雅という言葉が似つかわしいだろうか。しっとり感があって、柔らかく優しく、そして厚みを感じさせるフィーリングだ。エアサス付きとなしとでは少々異なるものの、しっかりとした骨格の下でしなやかな脚が豊かに動いている感覚は共通。エアサス付きで“コンフォート”モードを選べばさらに当たりの柔らかい乗り味を得ることもできるが、スタンダードなシャシーでも充分な快適さである。ボルボ自身がこのクルマを“ファースト・クラス”と表現することもあるけれど、それを大袈裟だと笑うことのできないレベルにはあると思う。

ガソリンエンジン搭載モデルの車重はおよそ2.1トン。PHEVモデルでおよそ2.4トン。こうしたクルマならではといえるそれなりの重量級だが、それでもパワーユニットのトルクの分厚さやその性格づけがそれぞれ巧みだから、最もアンダーパワーであるT5ですら加速にじれったさを感じたりすることはない。運動性能に関しても、軽快だとか爽快という類ではないけど、重いPHEVモデルでも、バッテリー搭載位置を車体中心に寄せている効果で重心も低く、ドライバーの意志を裏切らないぐらいのスポーティさは持ち合わせている。高速道路の巡航だって速い。高速側のパフォーマンスに不満らしい不満はないのだ。

が、最も心地好さを感じるのは、スピードの多寡に関係なく、どこかへ向かって悠々とクルージングをしている時間。たっぷりとした密度感のようなものが奥に控えた当たりの柔軟な乗り心地のよさに身体を預けるようにして、ゆったりした気持ちで行き先へと巡航するのが最高に気持ちいい。相当に満足度の高いリラクゼーションだ。XC90は、マリンの世界でリーマン・ショックで落ち込む以前よりさらに大きな盛り上がりを見せている、プレミアム・クルーザーのクルマ版のような存在、といえるかも知れない。

ボルボ XC60 D4 AWD インスクリプション(4WD)

活発だけどエレガンスさも備えるオールマイティな次女「XC60」

次女のボルボ XC60は、清楚系でややフォーマルな装いの姉と較べると、ルックスはちょっと活発そうな印象だ。XC90より全長で260mm、全幅で15~30mm、全高で100~115mm、ホイールベースで120mmほどコンパクトな体躯から、やや立体感を増したボディ各部のパネルやキックアップを効かせたリア ウィンドウの後端や傾斜を強めたリア ゲートから、そうした行動的な雰囲気が漂ってくる。それがXC90と同じ種類の品の良さと、綺麗にバランスしてるのだ。

ボルボ XC60 D4 AWD インスクリプション(4WD)
ボルボ XC60 D4 AWD インスクリプション(4WD)
ボルボ XC60 D4 AWD インスクリプション(4WD)

インテリアも、基本、同じ方向を向いてまとめ上げられている。ダッシュボードの上半分は穏やかな水平基調で、ここはXC90とほぼ共通なのだが、下半分はSENSUSのスクリーンやエアコンの送風口などを巧みに取り囲むようなラインをあしらうことで変化をつけていて、ちょっと動きのあるデザインなのだ。またウッドパネルもウォルナットやバーチのような高級感の演出に一役買うものというより、ドリフトウッド(流木をイメージした独特の枯れた風合い)やリニアライム・ウッドなど、自然を連想させる種類のものとなり、グレードによってはウッドの代わりにメッシュのアルミパネルがあしらわれるなど、感覚や好みで選べるしつらえとなっている。

シートは“Rデザイン”というスポーティ・グレードのみ専用のスポーツシートとなるが、それ以外は上級のXC90シリーズと共通のもので、それを包むレザーあるいはテキスタイルのコンビという素材も質感は高く、いずれも居心地はとてもいい。特にInscriptionグレードでは革も最高級のファインナッパレザーとなり、さらにベンチレーション機能やマッサージ機能まで備わる至れり尽くせりぶり。599~899万円という価格帯からもそのボディサイズからも、XC60の立ち位置はSUVの激戦区であるミドル・クラス。インテリアだけ見ても、それに恥じないどころか相当に魅力的な水準にあると思う。

ボルボ XC60 D4 AWD インスクリプション(4WD)
ボルボ XC60 D4 AWD インスクリプション(4WD)
ボルボ XC60 D4 AWD インスクリプション(4WD)

2リッターディーゼルターボの絶え間ない力強さ

ボルボ XC60 D4 AWD インスクリプション(4WD)

見た目のちょっと活発そうな印象は走らせてみると即座に確信に変わるのだけど、その前にエンジンのラインナップについて触れておくと、XC90と同じT5、T6、T8ツインエンジン(PHEV)の他、D4という2リッターのディーゼル・ターボまで用意される豊富なバリエーションが特徴。中でもディーゼルの190ps/400Nmという数値はパワーこそT5に譲るものの、トルクでは優っていて、ゆるやかな発進の領域から高速巡航まで、あらゆる場面であっさり満足させられるほどの力強さを発揮してくれる。T5の俊敏さを選ぶか、それともD4の絶え間ない力強さか、悩む人も多いんじゃないだろうか?

いずれにしてもXC60は、姉と同じSPAプラットフォームにAWDという基本構成で、しかも同じパワーユニット搭載車で較べれば車重がざっと200kg前後ほど軽い計算。その軽さ、ホイールベースの短さ、重心高の低さ、それらに最適化されたサスペンションのセッティングなどによって、XC90との違いをはっきりと感じられるほどの加速力やハンドリングを手に入れている。ちょっとばかりダイナミックなテイストなのだ。それでいて、XC90ほどのゆったり感やしっとり感こそないものの、文句なしに快適といえるほどの乗り心地も提供してくれる。色々な意味で死角らしい死角がない。

XC60はボルボSUV3姉妹の中で、活発に走ることも苦手とせず穏やかに走っても心地好い、そのバランスが最も均衡といえるスーパー・オールマイティなモデルだと思う。

ボルボ XC60 D4 AWD インスクリプション(4WD)
ボルボ XC60 D4 AWD インスクリプション(4WD)
ボルボ XC60 D4 AWD インスクリプション(4WD)
ボルボ XC40 T4 モメンタム(FF)

良家の末娘「XC40」は品のあるアクティブ派にして愛嬌たっぷりの人気モノ

そして末娘のボルボ XC40だが、御覧のとおり、である。写真からもお解りのように、パッと見からしてアクティヴな雰囲気を漂わせている。

ボディサイズはXC60より全長が265mm短い4425mm、全幅が25mm狭い1875mm、全高は+5~0mmの1660mm、ホイールベースは165mm短い2700mmと、スバル フォレスターやマツダ CX-5とほぼ同じくらいのサイズで、姉達と較べると圧倒的に小柄だ。が、存在感が少しも負けていないのは、逆側にスラントしたノーズ、盛り上がったエンジンフード、メリハリの利いた前後のフェンダーラインやドア下のくびれ、キックアップの強いサイドウィンドウ、クーペのような傾斜を持つリアゲート、そして四隅に踏ん張りを効かせる4つのタイヤなどが、フォルムとしての力強さを形作っているから。いかにも健康的なその姿からは、気取りのない親しみやすさ、カジュアルなつきあいを許してくれる人懐こさのような印象すら感じられる。

ボルボ XC40 T4 モメンタム(FF)
ボルボ XC40 T4 モメンタム(FF)
ボルボ XC40 T4 モメンタム(FF)

小柄なボディでしっかり快適、しっかり使いやすい

インテリアも、そのエクステリアと矛盾なくデザインされている。

ダッシュボードはメーター・ナセル、SENSUSのタッチ・パネル、そしてグローブ・ボックス上部と滑らかな階段状を描き、正面のセンターを格子柄のアルミパネル、またはドリフトウッドのパネルがドアまで回り込むように貫くという、シンプルだけど動きの感じられる造形。SENSUSやエアコンの送風口、スイッチ類など操作のために乗員がアプローチする部分はメタルカラーで囲い込む。スピーカーの位置を変え、ノートパソコンをそのまま放り込める大きさのドアポケット、センターのアームレストの下に隠れた大型のボックス・スペースとダストボックス、フロントの助手席側の膝元やリアシート横の小物入れなど、見えない場所、意外なサイズの様々な収納がたくさん。視覚的効果としてのデザインの格好良さと、実用やアクティヴィティのための機能が上手に融合されているのだ。洒落ていながら使い勝手も優秀なのである。

ボルボ XC40 T4 モメンタム(FF)
ボルボ XC40 T4 モメンタム(FF)
ボルボ XC40 T4 モメンタム(FF)

もちろん居心地だって悪くない。フロントのシート周りもリアのシート周りも、姉達ほどは広々とはしてないものの、充分なスペースが確保されている。姉達と同じようにレザーの似合うインテリアではあるが、北欧らしい柔らかいトーンのテキスタイルも、雰囲気があっていい。シートそのものも、いかにもボルボらしい弾力を感じさせてくれて座り心地がいい。身体は小さくても、しっかりと快適なのだ。

新開発されたコンパクトモデル専用プラットフォーム「CMA」を初採用

ボルボ XC40 T4 モメンタム(FF)

それらを支える基本骨格は姉ふたりと同じSPAプラットフォームではなく、CMA(コンパクト・モジュラー・アーキテクチャー)と呼ばれるプラットフォーム。これはSPAと同様の思想で作られた新世代ボルボの小型車専用プラットフォームとして開発されたもので、このXC40から新採用となった。XC40は389~539万円と3姉妹の中で最も価格的にも親しみやすいところにあるけれど、それでもゼロからキッチリと独自のモデルとして開発されている、ということがそういうところからもお解りいただけると思う。

4WDとFFモデルを設定、プラグインハイブリッドは今のところ未設定

XC40は、ボルボSUVの中で唯一FWDモデルがラインナップされているが、基本となるのはやはりAWDモデル。そしてパワーユニットは、スポーティグレードにはT5が搭載されるものの、メインとなるのはT5のチューニング違いといえる190ps/300Nmの「T4」となる。プラグインハイブリッドモデル等は今のところ設定がない。

というとパワー不足やスピード不足を懸念する人も出てきそうな気もするが、いやいや、心配は御無用。XC40は車重がFWDモデルで1.6トン少々、AWDモデルで1.7トン弱と、XC60よりも150kg以上も軽いのだ。しかもホイールベースが短いこともあって、姉妹の中でも飛び抜けて運動神経の優れた性格。だから加速もSUVらしからぬ鋭さと望外の伸びが味わえてとても気持ちいいし、減速だって素早く確実、身軽なところへ来てシャシーもそれ相当のセットアップになっているから、ワインディングロードではスポーツカーのようにコーナーを攻めて走ることが楽しめちゃう。その乗り味はダイナミックとすらいえる部類で、爽快にして痛快。ことクルマを走らせる楽しさに関してなら、姉妹の中で最も濃いといっても差し障りはないだろう。

良家の育ちゆえしとやかに粛々と走ることも嗜みのように巧みにこなすけど、その気になればいつだって行動的なアスリートに変身できるのだ。

(手前右)ボルボ XC40 T4 AWD インスクリプション(4WD)/(奥)ボルボ XC40 T4 モメンタム(FF)

多彩なバリエーションを持つXC40、それぞれの走りをチェック

XC40は導入記念として300台が用意されたT5 AWD Rデザイン ファーストエディションがあっさり売り切れて、現在では通常のラインナップの導入がスタートしている。つい最近、その主要モデルを乗り較べることができたので、それぞれについて軽く触れておくことにしよう。

XC40 T4 モメンタム[FF]

ボルボ XC40 T4 モメンタム(FF)

まずは、FWDのT4モメンタム。

シリーズの中で最も車重が軽いし、駆動がフロントだけということもあって、XC40の中で最も軽快な身のこなしを見せてくれるのがT4とT4モメンタムだ。“もしものときのAWD”が必要ない人だったらこれでいいのでは? と思えるほど楽しい。ホイール/タイヤが17インチもしくは18インチが基本なので、乗り心地のしなやかさを一番強く感じられるのも、実はこれ。癒し系でもあるのだ。

XC40 T4 AWD モメンタム/インスクリプション[4WD]

ボルボ XC40 T4 AWD インスクリプション(4WD)
ボルボ XC40 T4 AWD インスクリプション(4WD)

そしてメイン機種といえそうな、T4 AWDモメンタム/インスクリプション。

シンプルなモメンタムに対してプレミアムなインスクリプションと仕様はやや異なるが、格となる部分は一緒。4つのタイヤで路面を蹴るための軽いとはいえないメカニズムが備わっているわりには、そのネガティヴを全く感じさせず、素晴らしく素直にスピーディに曲がってくれる。軽快さではFWDに一歩譲るけど、これだけちゃんと曲がってくれて価格差も20万円しかないのなら、僕なら間違いなくこちらを選ぶ。アクティヴなクルマが、よりアクティヴに使えるという期待感があるからだ。

モメンタムはホイール/タイヤが18インチ、インスクリプションは19インチで、乗り味はもちろんモメンタムの方が優しいのだが、実は19インチでも立派に快適と呼べる範囲にある。仕様の好みで分かれるのだろうけど、どちらも好きという人にとってはチョイスは悩ましいかも。もちろんどちらを選んでも後悔することはないだろう。ちなみにパフォーマンス的に全く不満はないし、どちらもそれぞれ北欧感の強い仕様なので、僕の中のベスト・オブXC40は、このT4 AWDのどちらか、だ。

XC40 T5 AWD Rデザイン[4WD]

ボルボ XC40 T5 AWD Rデザイン ファーストエディション(4WD/限定300台)

そしてスポーティ・グレードでもある、T5 AWD Rデザイン。

252psのパワーも350Nmのトルクも、この車体には充分以上。どの領域からアクセル・ペダルを踏んでもスパーッ! と加速していく。速い速い。サスペンションも専用のチューンナップを受けていて、コーナーも安定感とともにスイスイと素早くクリアしていく。楽しい楽しい。ルックスも含めて最もアスリートっぽく、ドライビング・プレジャーが最も強いのが、このRデザイン。

ちなみにファーストエディションではホイール/タイヤが20インチで、「ちょっと硬すぎるかも」なんて意見もあったが、カタログモデルの標準は19インチ。おそらくこれなら硬すぎると感じる人はいないだろうと思えるくらいに快適だ。もちろん通常のT4 AWDよりは硬いけど。

※注:写真はXC40 T5 AWD Rデザイン ファーストエディション(限定300台)

まとめ|まずはいちどじっくり乗り較べしてみることをオススメする

(手前左)ボルボ XC40 T4 モメンタム(FF)/(右)ボルボ XC60 D4 AWD インスクリプション(4WD)/(奥)ボルボ XC90 T6 AWD インスクリプション(4WD)

というわけで、長々と──ホントに長々と──新世代ボルボSUV3姉妹について述べてきたけれど、参考にしていただくことはできそうだろうか?

……え? むしろ一気に説明されて逆に判りにくくなっちゃった?

うーむ、そうかも知れない。でも、そういう方はぜひとも、今後の週末はお近くのボルボ・ディーラーまで足を運んで、乗り較べてみていただきたい。とりわけXC60とXC40は売れっ子だから、全てのモデルが試乗車として用意されている可能性は少ないが、3姉妹の違いは実際に見較べたり乗り較べたりすれば一発でお解りになることだろうと思う。

ちなみに僕はこのレポートの中で安全装備に関して一切触れて来なかったけれど、それはボルボだから。その分野に関して手抜かりがないことはボルボにとっての当然というのが大前提で、いずれのモデルにも備えることの可能な全ての最新安全機能が標準で備わってる。しかもそれは、389万円の最もベーシックなXC40 T4でも変わることはない。ここに関しては他の自動車メーカーより間違いなく充実してるといっていいだろう。

そう考えると、ただでさえクルマの出来映えを考えればコストパフォーマンスのいい3姉妹が、ますますリーズナブルであるように思えてくる。そう、近頃のボルボは色々な意味で凄いのだ。

[筆者:嶋田 智之/撮影:佐藤 正勝・和田 清志・茂呂幸正]

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