【鎌倉市役所移転】住民投票条例案、20日に審議入り

 神奈川県鎌倉市役所移転計画を巡り、市民有志が制定を求める住民投票条例案の審議が20日、市議会臨時会で始まる。市は市長の諮問機関からの答申などを踏まえ、深沢地域整備事業用地(同市寺分)に移転する方針を示す。一方、市民有志は洪水の浸水が想定される範囲内に移転先が含まれていることなどを懸念し、38年ぶりに条例制定を直接請求した。深沢移転の是非を問う住民投票を実施するのか、市議会の判断が注目される。

 現庁舎は1969年に完成。防災拠点として機能を維持するために必要な構造耐震指標(Is値)の基準を下回り、県が2015年に示した津波浸水想定範囲内に立地していることなどから、市は15年11月から整備の必要性を調査。16年8月に有識者らでつくる「本庁舎整備方針策定委員会」に諮問した。

 策定委は17年3月、現在地は必要なスペースが確保できず、建て替えや長寿命化だと最大27億円多く費用がかさむことなどを理由に移転整備を提言。市も移転する方針を決めた。

 移転先について、策定委が挙げた同用地と野村総合研究所跡地(同市梶原)を、別の学識経験者らでつくる「公的不動産利活用推進委員会」が検討。▽公園や体育館、消防本部と一体整備し、防災力を向上できる▽鎌倉、大船との3拠点で行政サービスを提供できる-などの観点から同用地が優位と結論付け、市も移転先にする方針を示した。

 一方、市民有志は、今年5月の市広報紙1面に「本庁舎は深沢地域整備事業用地に移転します」との記載があったことを発端に、「深沢ありきで進めないで」と反発。6月末に市民団体を発足し、「住民投票で民意を問うべき」と住民投票条例の制定を目指して8270筆の署名を集め、今月6日に直接請求した。

 市民団体は、県が1月に示した最新の洪水浸水想定範囲内に同用地が含まれたことから、災害時の庁舎の安全性を懸念する。

 9月の市議会でもこの問題が取り上げられ、総務常任委員会で委員から「新たな想定が出て前提が変わった。立ち止まって再検討すべき」などの指摘が相次いだ。松尾崇市長は「十分に安全な本庁舎整備ができると示したい」と答え、議論は平行線をたどった。

 市は「元々、区画整理事業で周辺道路の高さに合わせ、約3メートルの高さに造成する計画。雨水貯留機能設置などで浸水対策も講じる」と説明。11月からは専門家を交え、新たな想定に基づく安全対策の検証を始めたという。

鎌倉市が移転先とする深沢地域整備事業用地を見学する市民=5月、同市寺分

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