社説(11/20):APEC宣言断念/米中首脳会談へ深い溝露呈

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 米国と中国の覇権を巡る対立の構図は、極めて憂慮すべき段階に入ってきた。

 21カ国・地域が参加するアジア太平洋経済協力会議(APEC)が首脳宣言の採択を断念した。1993年の初開催以来、初めてのことだ。

 米中両国が互いの通商政策や戦略構想を激しく非難し合い対立。事前の閣僚会議で詰め切れなかった声明文案のすれ違いが再燃し亀裂は埋まらなかった。今月末の米中首脳会談への影響も懸念される。

 外交に交渉決裂は付きものだが、多国間主義による自由貿易体制の協調を掲げるAPECが、大国同士の反目のために機能不全に陥ったことは深刻だ。枠組み自体の存在意義が問われかねない。

 国際会議での敵意むき出しの言動はいかにも見苦しい。

 ペンス米副大統領は、不公正な貿易慣行の是正など通商分野の指摘のほかに、「米国は相手国を借金の海に溺れさせることはしない」と、中国の経済圏構想「一帯一路」に矛先を向けた。相手国への投資を通じ債務不履行に陥らせる「借金漬け外交」との批判があることを念頭に、拡大路線をけん制した形だ。

 習近平国家主席は「腕っ節の強い誰かの一言で決まるものではない」と、トランプ大統領の自国第一主義を非難。保護主義批判の文言を声明に記すよう要求し、中国の行動を抑制するルール改革を求めた米国とぶつかった。

 開催前、習氏は議長国のパプアニューギニアやミクロネシア連邦、サモアなど8カ国の首脳を集め、戦略的な協力関係を築くことで合意した。

 もともと太平洋の島国諸国とは親密な関係にある米国も各国への巨額投資を表明している。この地域で影響力を強めようと画策する中国の姿勢が、ペンス氏を一層刺激したのではないか。

 国際会議の場を利用した大国の覇権争いが、本来の趣旨を超えてまかり通ることは到底許されまい。

 トランプ米政権の発足後、国際社会は協調や秩序を重んじる価値観の共有が困難になっている。今年4月のG20財務相・中央銀行総裁会議は、米中対立の影響で共同声明をまとめる予定すらなかった。

 6月の先進7カ国(G7)首脳会議はようやくまとまった首脳宣言をトランプ氏が閉幕後に否定。一時、枠組み崩壊の瀬戸際に立たされた。米の中間選挙を経てもこの傾向が弱まることはなさそうだ。

 いずれ、米中会談に問題は持ち越された格好。今回の両国の強硬姿勢を見る限り、貿易摩擦、南シナ海問題、人権問題など、どれを取っても折り合える要素は乏しく、厳しい現状に変わりない。

 ただ対話の扉は生かさねばならない。決定的な対立局面で勝者がないことも分かっていよう。追加関税緩和の情報も一時取りざたされた。トップ会談で何らかの打開が図られる可能性に期待したい。