『えちてつ物語 わたし、故郷に帰ってきました。』 芸人・横澤夏子の等身大の演技が光る

(C)2018「ローカル線ガールズ」製作委員会

 お笑いタレントを目指して、福井から上京したヒロインは夢半ばにして故郷に帰ってきます。故郷で出会った「えちてつ」ことえちぜん鉄道のアテンダントという職業に挑み、新しい人生を始めようとする女性の物語。夢を抱えて上京して、うまくいかないから実家に帰る。第三者が聞けば、「人生に失敗した」と思えるかもしれません。でもこの作品は、そんな人たちを否定することなく、「逃げることも勝ちの一つ」であることをとても優しく教えてくれます。

 ヒロインを演じるのは、お笑いタレントの横澤夏子。初めての主演ですが、どこか憎めないチャーミングな魅力ととても自然な演技力で、お兄さん役の緒形直人と衝突するシーンでもベテランに負けない迫力を見せています。

 この作品を通して知った、えちてつアテンダントの存在も気になるところ。福井にあるえちぜん鉄道はたった一両の車両に、乗車券の販売や、アナウンスを担当する「えちてつアテンダント」という女性たちが活躍しています。福井県を走るこのローカル線は、車窓から見える風景がとても心を穏やかにしてくれる。忙しい日々に追われている私も、映画を観るだけで随分心が癒されました。観ているうちに、行ったことのない福井県に、なんとなく行きたくなってしまう。えちてつに乗ってのんびりと過ごしたいなあ、と思わせてくれました。もしも今、自分の仕事がとても辛かったり、人間関係に落ち込んでいる人がいれば、この映画がそっと背中を押してくれると思います。★★★★☆(森田真帆)

11月23日(金)から全国順次公開

監督:児玉宜久

出演:横澤夏子、萩原みのり、山崎銀之丞

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