外国人の母国の状況

 米国を目指し中米諸国を出発した数千人規模の移民集団が、国境地帯に続々と到着している。トランプ米大統領は国境警備を強化し、違法越境者の難民申請を認めない構えという▲移民を受け入れるかどうかという米国の寛容性に焦点が当たっているようだが、彼らはなぜ母国で暮らし続けられないのか、母国にはどんな問題があるのか、改めて考えてみたくなる▲仕事がない。治安が悪い。そんな深刻な理由があるのだろう。仮に彼らの米国移住が認められたとしても、母国の状況が改善されるわけではない▲一方、日本の国会では、外国人労働者受け入れ拡大を巡る論議が続く。推進側は、日本社会の労働力不足を補うためには外国人が不可欠だと説く。必要とする側の事情は分かる▲同時に、供給側の事情にも目が向く。多くの労働者が日本への出稼ぎを目指すのは、自分の国に十分な収入を得られる仕事がないからだろう▲自国の経済が発展し、いい職場が生まれれば、貧困から抜け出そうと国境を越える必要はなくなる。そうなれば困るのは日本社会の側かもしれない▲米国も日本も、為政者は国内事情のことしか見ていない感がある。だがもう少し視野を広げ、やってくる外国人の母国がどんな状況にあるのか、目配りを忘れないようにしたいと思う。(泉)

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