雨に翻弄されたMotoGPバレンシアGP、転倒者たちの弁。ロッシ「マレーシアでの転倒に近かった」

 2018年シーズンMotoGP最終戦のバレンシアGPは、転倒者続出の荒れたレースだった。9名のライダーが転倒リタイアとなり、レースを完走したなかでも、転倒後再びレースに復帰したというライダーも多かった。雨と厳しいフルウエットの路面コンディションにクラッシュを余儀なくされた、マルク・マルケス、マーべリック・ビニャーレス、バレンティーノ・ロッシの3名に焦点を当てる。

 マルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)が転倒を喫したのはレース1の7周目のことだった。雨脚が強まるなか行われたレースで、アンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ・チーム)の背中を追い3番手を走行中だったマルケス。9コーナーに差し掛かったとき、激しいハイサイドを起こし、柔道の1本背負いのような形でコース上に叩きつけられる。

 そのままグラベルに滑っていたマルケスは、少しの間左肩を押さえてうつ伏せになったまま動かなかった。マルケスは日本GPで、左肩が脱臼しやすいくせを持っていることを明かしていた。ただ、マルケスはそのままリタイアとなったものの、ケガの具合について「肩は大丈夫だよ」と語っている。

タイヤチョイスを誤ったというマルケス。レース1で転倒しリタイア

 そして、転倒の理由についてはタイヤだったと説明した。マルケスはリヤタイヤにミディアムを選んでいたのだ。

「グリッド上でリヤにミディアムタイヤを選んだのだけど、これが間違いだった。フリー走行3回目ではいい感触だったんだけどね。レースではスタート後に雨が強くなって、どんどん悪い状況になっていったんだ。温度をキープすることも難しかった」

 レース1で濡れた路面の餌食になったのは、マーべリック・ビニャーレス(モビスター・ヤマハ・MotoGP)も同じだった。ポールポジションからスタートしたビニャーレスはレース1の12周目、4番手を走行中にクラッシュを喫している。

 ビニャーレスはランキング3位をバレンティーノ・ロッシ(モビスター・ヤマハ・MotoGP)と争っていた。このときロッシの後ろを走っていたビニャーレスは、「なんとかしてロッシの前に出たいと思っていた」のだ。

■レース2で転倒したロッシ、「マレーシアGPでの転倒に近かった」

 さらに、ビニャーレスはマシンに技術的トラブルを抱えていた。そのため、ポールポジションスタートながら序盤にポジションを落とすことになったようだ。

 激しいハイサイドクラッシュだったが、幸いにも大きなケガはなかったようで、「少し肩を負傷しただけ」だとビニャーレス。

「すごく集中していたし、速く走ろうともしていた。ただ、多くのリスクを負ってしまったんだ」

 ビニャーレスはこの転倒により、リタイア。チームメイト同士で争ったランキング3位を、ロッシに譲る形になった。

 マルケス、ビニャーレスと同様に転倒しながらも、完走してポイントまで獲得したのがロッシだった。ロッシが転倒したのは、赤旗中断後再開された、レース2だ。

 レース2でのロッシは相変わらずのフルウエットコンディションのなか、3番手、2番手とポジションを上げていく好走を見せていた。しかしレース2の10周目、12コーナーでスリップダウン。

「残り4周はコンディションがトリッキーで、ひどい感触だったよ。僕はミスをしてしまった。とても残念だ」

 ロッシは転倒したときの状況を、「マレーシアでの転倒に近い」と表現している。前戦マレーシアGPで、ロッシはトップ走行中に転倒。このときは「何が起こったのかわからない」とコメントしていた。今回の転倒についても、ロッシは「起こったことがよくわからないんだよ」と語っている。「きっと、もっと注意深くいるべきだったんだろうね」

 ロッシはその後マシンを起こして再びレースに加わり、13位でフィニッシュした。

 トップライダーたちが続々と姿を消した最終戦バレンシアGP。シーズンを席巻したマルケスも、復調の兆しを見せたヤマハファクトリーの両雄もいない表彰台が、サバイバルレースとなった戦いを象徴していた。

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