「2000本安打は辞めてから振り返ればいい」 ホークス内川が求める理想の打撃とは

2000本安打という記録に対する思いを語ったソフトバンク・内川聖一【写真提供:DAZN「Home of Baseball」】

相手がイチローであっても、現役である限りは追いかけ追い抜く

 DAZNではオフの新番組「Home of Baseball」の配信を2日から開始。「プロ野球シーズンレビュー」では、今シーズンに様々な記録を打ち立てた選手が、2018年を振り返るインタビューを配信している。打者編では、5月9日の西武戦(メットライフドーム)で史上51人目の2000本安打を達成したソフトバンク・内川聖一内野手にインタビュー。2回目は、2000本安打という記録に対する思いを、内川本人が振り返る。

 プロ18年、36歳で達成した2000本安打。しかし。内川は金字塔達成までの道のりを、「今考えるともっと早く打てたんじゃないかなっていう気持ちは強い」と振り返る。

「レギュラーを獲るまで8年かかりましたし、その8年間の間に、自分がもっともしかしたらできることがあったんじゃないかなって思いますし、もっと早くレギュラーを取っていれば、(2000本安打も)もっと早く達成してたはずなんで、18年という時間を考えると、自分が感じてるよりも時間がかかってるな……と思いますね」。

 どれだけの記録を打ち立てようが、決して満足せず、常にもっと野球がうまくなるための道を探し続けている。それが、内川聖一という男だ。

 2000本という数字に思い入れはないという。

「2000本打つことを目標にしてやってきたわけではないですし、かといって2000本で終わりだと思ってやってきたわけではないので、自分の中では何も思ってなかったんですが、周りから『それがすごいことなんだ』って自分の中にインプットされる感覚というものが、これだけすごいものなのかっていうのを改めて感じました」

 想像を絶するプレッシャーと戦い続けて手にした大記録だが、その数字に特別の意味を持たせることはない。「こういう数字っていうのは辞めた時に自分が頑張った結果として残ってる数字だと思いますんで、辞めた時に自分で評価してあげたいなと思います」という言葉に、現役選手としてのプライドがにじんだ。

 現役である以上、相手がレジェンドと呼ばれる人であっても、負けられないという気持ちだけは忘れない。

「イチローさんの記録を目の当たりにした時、オレまだ半分もいってないと正直思った。すごいなと改めて思いましたけれども、現役でやってる以上はそれをすごいと思っちゃいけないんじゃないかなと思ってるんですよね。自分が引退するところまでやり切って、やっぱりすごいなあの人(イチロー)の成績はって思えばいいので」

 前人未到の数字を残し続けるイチローであっても、現役である限りは追いかけ、追い抜くつもりだ。

ベテランになるほど新しいものに挑戦「いや、まだまだやるぞ」

 だからといって、2000本安打を「単なる通過点」とは表現しない。

「周りの方はよく通過点だって言ってくれますけど、僕の正直な気持ちは、『通過点って思うんだったら、そっとしといてくれよ』っていうことですね。でも、それは通過点であると周りが評価してくれることがその選手の凄さだと思います。2000本打ったからこそ、さらにそれに恥ずかしくないような成績を残し続けたいなと改めて思いました。終わってみた時に『2000本は通過点だったね』って周りが認めてくれるような数字を残すことが大事かなと思っています」

 内川にとって、2000本安打の評価は周囲がするものであり、自身としては、2000本安打を達成したことで、もっともっと理想の打撃を極め、結果を残したいと思わせてくれることによって、初めて意味を持ってくるのだ。

 理想の打撃とは何か。内川は明快に答えた。「10割打ちたいです」内川と同じく今年2000本安打を達成したロッテ・福浦和也も、同じことを話していた。完璧を求めていくと、答えは「10割打者」しかないということだろうか。

「『ミスった』っていう打球がヒットになるのも野球ですけれど、自分が意図したままにバットを操って、ボールの行き先さえも操れるぐらいの感覚っていうものを持てると楽しいだろうなと思います」

 目指す境地は“完璧な世界”だ。「それを達成するためには、いろいろな要素がすべて噛み合わないとできることじゃないと思う。だから野球だけやっててもダメだし、精神的なとこだけ学んでもダメだし、やることがいっぱいある」。心技体が極限まで充実し、自分の肉体とバットとボールが完全にシンクロした状態。決して現実に妥協せず、高い理想を求めてやってきたからこそ、それが2000本安打という記録になって結実した。

 36歳。まだまだ老け込む年齢ではない。「ベテランになると、いろいろ今までやらなかったことをやってみたくなったり、新しいものにどんどんどんどん挑戦するっていう姿勢が出てくる気がします。今年の成績を見ると、ああ、そろそろかな……とか、成績も落ちてきたなあ……みたいなことを感じた時期もありましたが、そういうのを感じてしまった自分に対して今はちょっと違ったなと思いますし、『いや、まだまだやるぞ』って正直自分の中でも思ってます」。年齢を重ね、円熟味が増したバットマンの風格が感じられる、力強い言葉だった。(Full-Count編集部)

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