金属行人(11月21日付)

 日産自動車の代表取締役会長、カルロス・ゴーン氏が自らの役員報酬を過少に申告していたなどの疑いで19日、東京地検特捜部に逮捕された。まだ容疑の段階で本当に不正があったのかどうか分からない部分もあるが、すでに影響は大きく、日産やルノーの株価下落を引き起こしている▼これを「ゴーン・ショック」と呼称するマスコミもあるが、周知の通り、その元祖は1999年。日産自動車はリバイバルプランで鋼材調達先を絞り込んだ。その結果、鋼材価格の低迷を招き、鉄鋼再編の引き金になったとされる。この逮捕劇は第2の「ゴーン・ショック」になるのだろうか▼さて、今回のケースだけではなく、コンプライアンスの徹底が叫ばれる一方で、企業の不祥事が後を絶たない。直近2年間で相次ぎ発覚したが、鉄鋼業も例外ではなかった▼なぜここ最近、企業の不祥事が多くなったのか。形骸化など制度疲労という理由もあったかもしれない。またコンプライアンス徹底の意識が高まったからこそ、発覚した事例が増えたのかもしれない▼ささいなことであったとしても不正は企業をつぶしかねない。今後はガバナンスの在り方がなお一層問われる。自社発のゴーン・ショックを引き起こさないためにも。

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