【現地ルポ】〈JX金属・本格始動の独フランクフルト拠点〉欧州でのプレゼンス向上へ、情報収集など事業サポート

 JX金属は、欧州域内での情報収集や関連企業・研究機関との連携強化を図るため、昨年7月1日付でドイツ・フランクフルトに事務所拠点を新設し、今年から本格的な活動を開始した。製錬や電材加工をはじめとした同社事業の欧州におけるプレゼンス向上に向けた活動や欧州拠点のサポートなどの役割も担う。同事務所を訪れ、今後の展開などを聞いた。(ドイツ・フランクフルト=相楽孝一)

 欧州屈指の金融都市で欧州経済の中心地として有名なフランクフルトは、自動車・電機などを含む金属関連産業の世界的な集積地の一つで、IoTやAIなど先端研究の発信地でもある。

 その金融街の中心地に開設されたフランクフルト事務所は、欧州におけるJX金属の事業サポートや、同社グループのビジネス・技術に関する調査・情報収集、欧州におけるプロジェクト推進のサポート、欧州に派遣されている人員のサポート、欧州での同社グループのプレゼンス向上などが主な役割。同じフロアに拠点を構えるJXニッポン・マイニング&メタルズ・ヨーロッパ社(ターゲット材などのマーケティング・販売会社)や、HCスタルクTaNb(ドイツ、タンタル・ニオブ事業会社)をはじめ同社グループの欧州拠点とも連携しながら、グループ全体の欧州展開に貢献していく考えだ。当初4人体制でスタートし、今年から本格的な活動を開始。人員も今秋から6人体制に拡充した。

 フランクフルトの利点の一つは、欧州各地および日本との交通アクセスの利便性だ。ロンドン金属取引所(LME)や国際金属・鉱業評議会(ICMM)が位置し、金属産業の重要拠点である英国・ロンドン、世界レベルでの情報交換の場として活用される国際銅研究会(ICSG)などがあるポルトガル・リスボンをはじめ、東欧、ロシアまで含めて欧州のほぼ中心にあるのがフランクフルト。欧州各地への移動が容易で、ハブ空港である国際空港もあり、東京との間で複数のダイレクト便も運航している。

 また、欧州は環境規制や化学物質規制などで世界をリードする地域でもある。河田正俊所長は「欧州で採用された規制がグローバル・スタンダードになることもあるため、欧州の動向を押さえておくことは重要だ。例えば欧州の日系企業が参加するJBCE(在欧日系ビジネス協議会)などに参加してBREXIT、環境規制、持続可能性などといった欧州の情報収集を行いたいと考えている」と話す。

 また、世界的な課題である銅精鉱中の不純物に対する欧州における規制や技術対応、ベリリウム銅に使われるベリリウムの動向など同社ビジネスに関連する情報を収集し、「将来の方向性を考えるうえでの参考情報として役立てていく」考えだ。

 さらに「資源事業の将来を考えると、アフリカも考える必要性が出てくる可能性がある。HCスタルクTaNbとしてもタンタル原料の主要供給地域であるアフリカは無視できない。そういう意味では距離的に近いこの事務所が貢献していくことがあるかもしれない」との見解を示した。

 一方で欧州の関連企業・研究機関との協業について河田所長は「自社技術だけでなく外部の技術と融合して新しい展開を推進するというのは一つのトレンド。例えば、(欧州に)優れた技術を持つベンチャーがあれば当然視野に入れるべきだし、そうした情報収集も行っていく」と話し、欧州でのプレゼンス向上については「欧州有力企業とのパイプを太くしていきたい。ICSGに出席してJX金属を欧州でPRするようなミッションもあると考える」とする。また、「当社はターゲット材や化合物半導体などの分野で深く認知してもらっているが、電子材料はJX金属に聞けば何でもわかるというところまでもっていきたい」と話した。

 今後は事務所の人員・機能を拡充させながら情報収集などをより充実させていく計画で、将来的には「製品を売り込むような拠点」への展開も視野に入れ、積極的に活動していく考えだ。

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