福島第1原発事故を映画化 吉田所長役に渡辺謙さん 佐藤浩市さん主演

【映画特集】

映画「Fukushima50」主演の佐藤浩市さん(右)と共演の渡辺謙さん(左) 提供写真

 2011年の東日本大震災の際に起きた福島第1原発事故をテーマにした映画「Fukushima50(フクシマフィフティ)」(若松節朗監督)が制作されることが決まった。「KADOKAWA」が明らかにした。佐藤浩市さん主演、渡辺謙さんが共演。佐藤さんは当時の1・2号機の当直長、渡辺さんは福島第1原発所長だった吉田昌郎さん(故人)の役を務める。原作は門田隆将さんのノンフィクション「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」。

 公開は2020年、クランクインは今年11月25日、クランクアップは19年1月末の予定。津波、外部電源の喪失、そしてメルトダウン。あの過酷な原発事故を名優たちがどう演じるか注目される。(まとめ 共同通信=柴田友明)

【映画特集】

東京電力福島第1原発の免震重要棟で事故対応の指揮を執る吉田昌郎氏=2011年5月、福島第1原発(東京電力提供)

 震災後、福島第1原発の建屋で次々と水素爆発などが起こり、11年3月15日に約730人が敷地外に一時退避。その際に第1原発にとどまった人数が50人(実際は70人)と伝えられ、海外メディアが「フクシマ・フィフティーズ」という名称で報じた。映画のタイトルもそこに由来する。

 角川歴彦・製作代表は次のように文面でコメントしている。「角川映画には『金環蝕』『金融腐食列島「呪縛」』『沈まぬ太陽』という社会問題をテーマ とした作品を製作してきた伝統があります。来たる2020 年、〝復興五輪〟と銘打たれた東京オリンピック・パラリ ンピックを控えたこの時期にこそ、今一度、震災の記憶と向き合い、復興への思いを新たにする作品を世に問う、 それこそが映画人の使命であると考えております 」。

 若松監督は2009年に、日航ジャンボ機墜落事故などをテーマに航空会社社員の生きざまを描いた映画「沈まぬ太陽」(原作山崎豊子さん)でメガホンを取り、渡辺謙さんが主演している。 

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東京電力福島第1原発の3、4号機の中央制御室で計器を見る関係者=2018年11月15日、福島県大熊町

【東京電力福島第1原発事故】2011年3月11日に発生した史上最悪レベルの原発事故。大量の放射性物質が広範囲に拡散し、一時、最大で住民約16万人が福島県内外に避難した。県内には今も住民が自由に立ち入りできない帰還困難区域が残る。事故の深刻度は国際評価尺度(INES)でチェルノブイリ原発事故と同じ「レベル7」。東日本大震災の津波と地震で電源を失い原子炉の冷却ができなくなった結果、運転中の1~3号機で炉心溶融(メルトダウン)が起きたほか、1、3号機と停止中だった4号機の原子炉建屋が爆発、大破した。

【ニュースリリースから】

佐藤浩市さん(福島第1原発1・2号機当直の伊崎利夫さん役)のコメント

「 忘れる事で前に進む、失敗をしても何度もトライをする、それは生き物の中で人間だけが出来ることです。しかし 絶対に忘れてはいけない、繰り返してはいけない事があります。あの日あの時どういう状況に我々が、日本があっ たのか?その事を思い出し、明日のそして後世の為の映画を若松監督、渡辺謙さん達と一緒に確認をしながら作り たいと思います」。

渡辺謙さん(福島第一原発所長の吉田昌郎さん役)のコメント

  映画『許されざる者』の撮影中、浩市くんに映画 100 本目の時はどんな役でも参加するよと、約束してました。でも、 気軽に参加する作品ではありませんでした。今もなお苦しみの続く福島の方々の思いを受け止めながら『沈まぬ太 陽』以来の若松監督、そして浩市くん、素晴らしいキャストと共に緊迫感溢れる画を積み重ねていきたいと思って います。ご期待下さい。

若松節朗監督のコメント

  2011 年3 月11 日から15 日にかけての福島第一原発を襲った事故は国内だけではなく世界の人々をも震撼させた。 穏やかな海は荒れ狂う大津波となって原子力発電所の命綱である全ての電源を奪ってしまった。この映画は家族や 生まれ育った町や村を守る為に命を賭して未曾有の危機に挑んだ人々の話です。あの時、現場にいた者しか知り得 ない真実を描いて行こうと思っています。スタッフ、キャスト一同全力で準備を進めています。たくさんの方に注目し て頂ける映画になる様、強い覚悟で臨みます。

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