アサギマダラ2300㌔の旅 長野→長崎→台湾 伊藤さん(バイオパーク副園長)ら確認

 長野県軽井沢町から放たれたチョウ「アサギマダラ」が、長崎市南部の樺島を経由し、台湾西部の澎湖(ほうこ)島で見つかった。40日かけ、直線距離で約2300キロを飛んだ計算。長崎でチョウを発見し、再び放った長崎バイオパーク(西海市)副園長の伊藤雅男さん(57)は「中継地を含めた移動ルートの把握に一歩近づいた。人と人を結ぶチョウだと改めて実感した」と話している。

 伊藤さんによると、アサギマダラは羽を広げた長さが10センチほどで、日本や台湾、香港、インドなどアジアに生息。春に北上し、秋に南下する。九州では秋に産卵し越冬羽化するケースもあり、移動の全容は完全につかめていない。呼び名は羽のあさぎ色と紋様が由来という。

 10月1日、長野県軽井沢町の木版画家、三村治男さん(71)が羽に「カル39 10・1」と書いて20匹放った。1カ月後の今月1日、長崎市の樺島灯台近くでアサギマダラの観察をしていた伊藤さんが、ツワブキの花に止まっていた雌1匹を確認。「NBP(長崎バイオパーク) B 11/1」の印を加え再び放った。

 9日後の今月10日、澎湖島で実習中の台北市立大の学生が発見。知人を通して伊藤さんに連絡があった。調査で見つかるアサギマダラの9割は雄で、雌は珍しいという。

 伊藤さんは、1997年からアサギマダラの羽に印を付けて放す調査を開始。これまでに約8万匹を県内各地から放ち、南下では与那国島、沖縄本土、喜界島。北上では石川県への移動が確認されている。台湾で見つかったのは今回で8匹目。三村さんは今年から本格的に調査に参加、台湾、長崎以外では三重県、滋賀県から報告があった。

 長野県生まれの伊藤さんは「故郷から飛んできたアサギマダラが長崎に立ち寄ったのは感慨深い」。三村さんは「飛行が確認できうれしい」と話した。

長野から長崎に飛来したアサギマダラ(伊藤さん提供)

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