「まずい棒」は銚子電鉄を救うか

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京王電鉄から伊予鉄道を経てやってきた2000形電車(1962年製) とまずい棒。売れ行きは好調のようで、9月からはネット販売も始まった

 房総半島の付け根を走るローカル私鉄、銚子電気鉄道(千葉県銚子市)のホームページを見て驚いた。鉄道好きの中川家・礼二さんを思わせるキャラクターと、「まずい棒」という文字が目に飛び込んできた。

 「マズいです!経営状況が…」「ぬれ煎餅に続け!銚子電鉄のお土産に『まずい棒』を作りました!」という刺激的なコピーに、所々に火がついて泣いている電車のイラストも添えられている。銚子電鉄にいったい何が起きているのか。6年ぶりに現地を訪れた。

 特急「しおさい」号で東京駅から2時間弱で銚子へ。銚子電鉄の銚子駅は、JRのホームの先端にある。小ぶりな駅舎に「絶対にあきらめない ちょうし駅」の駅名標が。これはのっぴきならない事態のようだ。

 銚子電鉄と言えば「ぬれ煎餅」。2006年、「ぬれ煎餅買ってください。電車修理代を稼がなくちゃいけないんです」という切実な訴えが大反響を呼び、倒産の危機を回避した。

 しかし、東日本大震災の影響もあって再び経営状況は悪化。「ぬれ煎餅に次ぐヒット商品を販売しないとまずいんです」との危機感から、今年8月にスナック菓子・まずい棒(コーンポタージュ味)の販売開始となった。

 銚子駅から、まずい棒を売っている犬吠(いぬぼう)駅へ向かう。ホームで700円の「弧廻手形1日乗車券」を買い、2両編成の電車に乗った。

 先頭車両は床が木目調、窓には大正時代のステンドグラスをイメージしたフィルムを貼った「大正ロマン電車」。日曜日の午後で、ロングシートはほぼ埋まっている。車輪をきしませ、20分弱で終点・外川(とかわ)駅の一つ手前、犬吠駅に着いた。

 同駅の売店の目立つ場所に、まずい棒があった。“本家”うまい棒に似ているが、ちょっと太めの印象。1パック15本入りで600円。手土産にしてはかさばる感じで、5本で1パックとか小ぶりのものがあるといいかもしれない。

(上)沿線随一の撮影地、君ケ浜~海鹿島(あしかじま)にて。沿線には キャベツ畑が広がり、様々なアングルが楽しめる。右のブルーの車両が大 正ロマン電車、(下)頭皮ケアシャンプーなどを製造、販売する会社がネーミングライツパート ナーとなった「笠上黒生(かさがみくろはえ)駅」の駅名標。もちろん、 ホームには“本物”の駅名標もありました

 定番のぬれ煎餅ももちろん購入。もう一つ、ネーミングに引かれて買ったのが「鯖威張る(サバイバル)弁当」。包み紙には「経営状況はまずいけどこれはウマイ!!」と自虐的なコメントが。炊き込みご飯にサバの塩焼きの切り身を乗せただけのシンプルな駅弁だが、駅で温めてくれて大変おいしかった。

 銚子電鉄の年間乗客数は、1975年ころの約150万人から、昨年度は40万人を切るところまで減少した。5年前には運行本数を大幅に削減しており、沿線人口も減る一方では鉄道事業の現状、展望は厳しい。

 一方、収入の7割を占めるぬれ煎餅や新発売のうまい棒のほか、3年前からは駅名愛称のネーミングライツの販売(銚子駅の「絶対にあきらめない」もその一つ)を開始。

 大正ロマン電車の改装費用には、地元の会社と結んだ「車両ネーミングライツ」のパートナー料を充てた。これからもあの手この手で収入増を図っていくしかないだろう。

 鉄道ファンの一人としては、仲ノ町駅構内に留置されているドイツ生まれの小型電気機関車「デキ3」が動く姿を見たい。1922年製で本線走行は無理としても、仲ノ町駅構内を月1回でも行ったり来たりしてくれたら涙ものだ。

 ☆藤戸浩一 共同通信社勤務 銚子は首都圏から決して近くはないが、JR東日本の「えきねっと列車限定割引 トクだ値40」で購入すると、特急しおさいの指定席利用で東京~銚子が約4割引の片道2470円。これは乗車券のみの2270円とほぼ同額でかなりのお得感がある。