「すべてプーチンが悪い」回答、過去最高 領土交渉での譲歩、ますます困難か

By 太田清

会談する安倍首相(左)とプーチン大統領=14日、シンガポール(共同)

 ロシアの独立系調査機関「レバダ・センター」が10月に行った世論調査によると、国が直面している問題に対しプーチン大統領に「全面的に」責任があると答えた人は回答者の61%に上り、2012年に同様の調査を始めて以来過去最高となった。「いくらかは」責任があると答えた人も22%で合わせて83%が程度の違いはあれ、プーチン氏の責任を問うていることになる。 

 それぞれ55%と21%だった1年前からさらに悪化。また、直近の日曜日に大統領選があった場合、だれに投票するかとの設問にプーチン氏を挙げた人の割合も1年前の53%から40%に急落している。ニュースサイト「ニュース・ルー」は識者の話として「ツァーリ(皇帝)に罪はなく、悪いのは取り巻きの貴族だ」との帝政時代以来の「公式」が通じなくなっていると指摘。14年のウクライナ領クリミア併合に続く欧米の経済制裁、主要輸出品の原油価格下落、通貨ルーブル急落などによる経済の低迷に加え、年金改革への反発が「プーチン人気急落」の大きな要因だと強調した。 

 年金改革は年金受給開始を23年までに、男性が現在の60歳から65歳に、女性は55歳から60歳にそれぞれ段階的に引き上げるもので、議会可決後にプーチン大統領が署名し実施が決まった。 

 プーチン氏の支持率を巡っては、11年、統一ロシアの下院選不正疑惑から大規模な反政権デモが行われ、12年の大統領職再登板後も支持率は60%台と伸び悩んだがクリミア併合によるナショナリズムの高まりで80%台に駆け上り、15年10月には90%近くを記録。その後も勢いを維持していたものの、ここに来て一気にその人気が凋落、「クリミア危機」前の水準に戻っている。 

 安倍晋三首相とプーチン氏は14日にシンガポールで行われた首脳会談で、1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約締結交渉を加速化させることで合意。日本では領土問題進展への期待が高まっているが、日本が「返還すべき」ととらえる北方領土について大部分のロシア人は、「2千万人」もの人命を犠牲にして勝利した大祖国戦争(第2次大戦)の結果、合法的にロシア領となったとの政府の公式見解を信じているのが現実だ。

 普通に考えてこれだけ支持率が低迷する中、4島であれ2島であれ領土の引き渡しという国民にとり極めて不人気な政治的譲歩を行うことはますます厳しくなっているとみるのが常識的ではないか。領土問題解決はロシアの国内情勢と切り離せないと思っているのは筆者だけではあるまい。 (共同通信=太田清)

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