貧困と虐待「非常に相関的」 桜井智恵子教授 講演

 関西学院大の桜井智恵子教授(教育社会学)は18日、長崎市尾上町の県庁で「子どもにとっての〝かいけつ〟をめざして」をテーマに講演した。「貧困と虐待のリスクは非常に相関的」と日本社会を分析し、ありのままの子どもを認める「存在承認」の大切さを訴えた。
 子どもの支援活動に取り組む「子どもの権利条約ながさきネット」が主催。桜井教授は、1999年に国内で最初にできた兵庫県川西市の第三者機関「子どもの人権オンブズパーソン」の代表を務めた経歴がある。
 講演では経済協力開発機構(OECD)の統計を挙げ、国内のひとり親世帯の相対的貧困率が高いと指摘。「日本はたくさんお金を持っているが、国民に等しく配分されていない」ことが背景にあり、「貧困と虐待のリスクは非常に相関的」と問題提起した。さらに、「自己責任」の観念が前面に出た現代社会の競争原理が、子どもや親世代の生きづらさを生んでいると説明した。
 子どもが抱える悩みについては事例を交えながら紹介。教育現場で学力テストなどの成果を重視した指導方法に疑問を呈し、「結果的に自己肯定感の低さにつながり、大人になっても声を上げなくなるのではないか」と不安視した。
 ありのままの子どもの姿を認める「存在承認」を地域に根付かせることを課題に挙げ、「市民社会がどう問題化するかが大事。長崎県内でも、その意識がまだ遅れていると感じている」と改善に期待を寄せた。
 県内では今年6月、「ながさきネット」が主体になり、こどもの相談・救済活動のための第三者機関「子どもの権利オンブズパーソンながさき」が発足。これまでに中高生や保護者らから約10件の相談を受けているという。関係者ら約30人が参加した。

「子どもにとっての〝かいけつ〟をめざして」をテーマに講演する桜井教授=県庁

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