カネミ油症事件 映画「食卓の肖像」 被害者共感 市民ら認識深める

 カネミ油症事件の被害者を追ったドキュメンタリー映画「食卓の肖像」の上映会が23日、長崎市内であった。市民ら約60人が観賞し、事件への認識を深めた。被害者からも「見て良かった」という声が聞かれた。
 映画は県内初上映。油症認定、未認定の被害者や2世らが健康を奪われながら、食の安全に気を付けて暮らす姿を描写している。
 金子サトシ監督(53)と諫早市在住の被害者、下田順子さん(57)のトークでは、事件に対する国の対応のまずさや責任についてやりとりがあった。金子監督は2012年施行の救済法で認定枠が少し広がったものの本格救済に至っていない点を挙げ、「国は認定患者を極力増やさないようにしている」と強調。「汚染油や患者の調査をきちんとすべきだった」とも指摘した。下田さんも「原因物質PCBの製造を当時許したのはどこか」とし、国の責任に言及した。
 25年前から原因不明の症状に苦しみ10年に認定された長崎市の女性(67)は観賞後「被害者が、自分は油症だと分かってホッとしたというシーンに共感した」と感想。女性は皮膚症状だけが油症と思っていて、体の多様な異常と油症が長い間結び付かなかったという。
 映画は25日午後1時、五島市福江総合福祉保健センターでも上映される。

家族の健康被害や国の責任などについて語る下田さん(左)と金子監督=長崎市上町、NBCビデオホール

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