こだわりの野球用品をデータとともに提供 「超野球専門店CV」の独創性

鎌ヶ谷に店を構える「超野球専門店CV」【写真:大森雄貴】

関東最大級の品揃え。徹底された“野球感”

 日本の若年層の野球の競技人口減少は顕著だ。その影響は、野球界にとどまらず、それを支える道具メーカーや販売店にも及ぶ。この“野球危機”の中、野球にこだわるのが、日本ハムファイターズ2軍施設もある鎌ヶ谷に店を構える「超野球専門店CV」だ。2周年を迎え、勢いが止まらない「超野球専門店CV」を訪ねた。

「絶対にグラブは1個1個並べるんです。作り手の魂が宿っていますから」

 代表取締役の中村俊也氏は、案内しながら語る。グラブ、バット、スパイクはもちろん、ユニフォームからケースもあり、手入れ品からサプリメントまで、内野ダイヤモンドより少し小さいくらいの店内を目一杯に埋め尽くす。圧倒的な“野球感”に包まれ、気持ちが高まる。

 驚くことに、俊也氏は野球の経験がない“野球好き”だ。しかし、息子であり、店長(専務取締役)の中村勇太氏含め従業員6名は全員高校野球経験者。それが採用条件の1つである。

口コミで広がる評判、ユーチューバー・トクサンも紹介

 俊也氏に、これまでの顧客層を聞いた。

「開店当初は野球に打ち込む高校生の場を目指し、展開してきました」

と語るように、店内のテレビは“熱闘甲子園”が流れている。

「最近では力を入れてきたSNSの効果や口コミもあるのか、草野球だったり、県外の球児だったりと客層が広がっています」

 関東最大級の用品が揃う専門店店員は最高級の情報を提供するため、日々の学びを怠らない。彼らが展開するSNSやブログは興味深いことばかりだ。

 超野球専門店CVの2周年記念イベントは、子どもたちを中心に圧倒的人気を誇る野球ユーチューバーのトクサンとローリングスのグラブ職人の日高氏の「グラブ対談」が行われた。グラブ職人の実直なグラブに対する語りとユーチューバーとのコラボは現代的マーケティング戦略だろう。

モノを売るだけの用品店から“モノ×データ=顧客の最適品”を目指して

「モノ(道具)を売るだけの用品店だけでは生き残れない」

 そう言い切るのは、店長(専務取締役)の中村勇太氏。店内の野球用具の周りには、必ずと言っていいほど、“数字”が添えられる。

 一般的な用品店であれば、使用した新聞や雑誌の記事やメーカーのチラシなどが添えられていることが多い。しかし、超野球専門店CVは、道具であれば、特徴を可視化するグラフのPOPがあったり、これまでの傾向からの分析があったり、ミズノ社製のスイングトレーサーなどの測定器具の検証結果など、“数字の事実”が存在する。

 用品で言えば、野球用ズボンエリアでは、メーカー毎の “汚れの落ちやすさ”などが細かくグラフ化されており、隣のエリアには、ユニフォームを洗う洗剤の鉄板品「ポール」が積み上げられているのは、野球部ママも嬉しいだろう。

 勇太氏は「ただ売るのではなく、データに沿って提供した。他の業界では、顧客の好みに合わせるのは当たり前。本当に合ったものと出会って欲しい」と言う。

 2周年記念イベント2日目には、SSKのテクニカルピッチを使っての回転数コンテスト&スイングスピードコンテストを行うなど“らしさ”全開だ。

一歩先へ行くアイデアと活動で競技人口減少の波を乗り越える

 超野球専門店CVも進行する競技人口減少を受け、アクションを続ける。こだわりの品が並ぶが、野球道具は安い買い物ではない。個人の感覚とも向き合ってもらうため、試打スペース、2階には25メートル×15メートル程度のフリースペースがあり、キャッチボールもできる。

 また、地元の整骨院と提携し、肩肘検診や指導者講習会などイベントが開催されたり、2階のスペースでは、子ども向けのスクールを実施しれたりと従来の用品店の型に嵌まらない。

 これまでの“一歩先へ”という願いから「“超”野球専門店」であり、道具を売るだけの「野球用品店」ではない。用品店から専門店へ、現代では必須とも言えるIoT(Internet of Things=モノのインターネット)を武器に、超野球専門店CVはさらに加速していく。(大森雄貴 / Yuki Omori)

© 株式会社Creative2