休養が生む「超回復」 部活動問題で海老名市教委

 やり過ぎが指摘される中学校の部活動問題で、海老名市教育委員会は9月から12月にかけ、市内で開業する整形外科医が中学校を訪問し、休養日の重要性などを教える講演会を開催している。最新のスポーツ医科学の知識を身に付け、部活動改革の浸透を目指す試みだ。

 市教委が初めて開催している講演会には、市内の整形外科医3人が協力、手分けして全6中学校を2学期中に訪問する。対象は運動部に所属する1、2年生と顧問教諭や部活動指導員、保護者ら。成長期の身体の仕組みやけがの防止法などを紹介している。

 11月1日、柏ケ谷中の体育館では、約450人の生徒らを前に山田博之医師が「なぜ休養日は必要なのか」と題して講演。山田医師は「運動のやり過ぎによるけがは予防できる。膝や肩などに起きる痛みを我慢してしまうと疲労骨折してしまう恐れがある。年齢別では12~16歳の発症率が高い」などと説明した。

 オーバーユースで発症するオスグッド病や野球肘、腰椎(ようつい)分離症など具体的な症例をエックス線写真などを使って解説。自己診断法を紹介した上で▽痛みの観察▽運動の強さと回数の抑制▽個別メニューの選択などの対処手順を教えた。

 山田医師は「運動することで筋肉や骨は小さく壊れる。休養によってその部分が再生し、より強くなる超回復という現象が得られる。痛みがあれば、顧問の先生に相談してメリハリのある練習を心掛けてほしい」と訴えた。

 約40分間の講演後、スポーツ障害を経験した生徒らから「痛みが改善するまでの日数は」「けがの予防に良い食事は」などの質問が出された。

 剣道部に所属する2年生の男子生徒は「大会が近づくと、毎日練習しないと不安になる。今回、休みを取った方がパフォーマンスは上がるという超回復の仕組みを学ぶことができてよかった」と感想を述べた。

 同市教委の部活動改革は「週1日の休養日設定」など独自指針を策定して今年4月にスタート。国が3月に週2日以上の休養日などの指針を示したが、1997年にも同様の設定例が通知されたものの、学校現場に浸透しなかった教訓を踏まえて整形外科医の講演会や、効率的な練習法を指導する外部トレーナーの派遣を3学期に予定している。

 講演会の冒頭、伊藤文康教育長は「部活動問題が顕在化する中、整形外科医に中学生の体を一度見てほしいと相談したことがきっかけで講演会が実現した。スポーツは中学生時代で終わりではなく、長い人生で楽しむべきもの。正しい知識を身に付けて自分の体を大事にしてほしい」とあいさつした。

スポーツ障害の予防法を紹介した山田医師の講演=11月1日、海老名市立柏ケ谷中学校

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