長崎県の鮮魚 輸出に追い風 中国輸入拡大方針 現地バイヤー“熱視線”

 中国が改革・開放政策を始めてから40年の節目に合わせ11月初旬、上海で初めて開いた一大外交イベント「中国国際輸入博覧会」。長崎県ブースに並んだ海の幸にはバイヤーから“熱視線”が注がれた。長崎の水産物の最大輸出先である中国が市場開放と輸入拡大の方針を打ち出す中、長崎県関係者は「これまでの実績と利便性の強みを生かせる商機」とみる。現地で高まる日本食ブームも追い風に、長崎の鮮魚に販路拡大の兆しが出ている。

 十数種の魚に中国人バイヤーが群がり、スマートフォンで撮影を始める。11月6日、上海。約30万平方メートルの広大な会場には、世界170カ国超から3600以上の企業・団体の出展ブースがひしめき合った。その中で、長崎県や魚市など10団体でつくる「県水産物海外普及協議会」が出品した鮮魚の注目度は高い。顔を近づけてのぞき込む人、熱心に種類を尋ねる人も見られた。

 「バイヤーの食い付きはいい。今の中国では品質が保証されていれば高額でも売れる」。長崎県国際課課長補佐で上海市駐在の黒川恵司郎さん(45)は語る。
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 習近平国家主席は5日に中国国際輸入博覧会で行った基調講演で「15年間で中国のモノとサービスの輸入額は約4500兆円を超える」と表明し、さらなる市場開放の姿勢を強調した。

 県水産物海外普及協議会が把握した分の長崎県の水産物輸出実績は2017年度で約21億円。このうち中国向けは5割超を占め、活鮮魚の対中輸出額だけでも約11億4千万に上る。長崎県が集計した全国の活鮮魚の対中輸出額約25億を見ても長崎県は圧倒的な国内シェアを誇る。

 長崎県は2005年に全国でも先駆的に鮮魚の対中輸出を始め、地理的優位を生かして販路を拡大。今では中国全土の約1200の日本料理店で長崎県の鮮魚が取り扱われ、多くが中・高級店だという。
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 長崎県ブースではシマアジやマダイなどの展示に加え、博覧会期間中に披露したマグロの解体ショーも視線を集めた。水産物ブースの横では、長崎県物産ブランド推進課や長崎県貿易公社などが官民一体で日本酒や島原そうめんなどの加工食品を出品。中国の日本料理店などに向け、鮮魚とセットで販売提供が見込める物産品を売り出した。中国の食品貿易会社の男性バイヤーは五島うどんを試食し、「この食感は中国になく珍しい。スーパーやレストランに卸せば人気が出る」と評価していた。

 長崎県物産ブランド推進課は、博覧会での商談から数百万円規模の新規取引を見込んでいる。加工食品の対中国向けの2017年度輸出実績は前年度比2倍超の約3千万円。今後は需要が高い日本酒のほかに、焼酎や調味料などにも注力するという。

 まだまだ開拓の余地がありそうな中国市場。県水産物海外普及協議会の事務局を務める長崎県水産加工流通課は「市場開放が進めば輸出の規制緩和が見込める半面、競争が激化する。既存の販路を生かしつつ新規開拓に努めたい」とした。

長崎県の鮮魚をスマートフォンで撮影する中国人バイヤーら=中国上海の「国家会展中心」

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