松本山雅が大混戦を制し、2018年シーズンのJ2は幕を閉じた。
松本とともに2位・大分トリニータがJ1昇格を決定させ、3位・横浜FC、5位・大宮アルディージャ、6位・東京ヴェルディがJ1参入プレーオフに挑む。11月25日には大宮×東京Vの一戦が行われ、勝利した東京Vが横浜FCとの2回戦に臨むこととなった。
敗れた大宮とプレーオフに出場しないJ2クラブ(天皇杯を勝ち上がっているモンテディオ山形を除く)は、今季の公式戦をすべて終えた。
ここで今季のJ2をプレイバックすると、夏の移籍市場でJ1クラブへ主力を引き抜かれたクラブが多かったのが印象的であった。
特にレノファ山口、徳島ヴォルティス、FC岐阜はそのダメージが大きかったクラブである。
彼らはこの危機にどのように対応し、どのような手を打ったのか。今季の戦いぶりを一挙に振り返っていきたい。
■8位・山口/猛威を振るった“トリデンテ”が解散し、新機軸を導入
小野瀬康介、オナイウ阿道、高木大輔の強力3トップが躍動し、序盤戦から安定して上位をキープしていた山口。アンカーを置いた4-3-3をベースに、司令塔の三幸秀稔を中心としたパスワーク、ピッチを幅広く使ったサイドアタックで旋風を巻き起こした。
だが、リーグ戦25試合で10得点と快進撃を支えた小野瀬が7月末にガンバ大阪へと移籍。これにより“トリデンテ”が解散となり、その穴埋めに苦慮することとなる。
技巧派の丸岡満、8月に北海道コンサドーレ札幌から獲得したジュリーニョ、左サイドからコンバートされた高木らが右ウイングで起用されたが、チャンスメイクからフィニッシュまで多大な貢献をしていた小野瀬の穴は簡単に埋まらない。
そして、チームには小野瀬在籍時から露呈していた別の問題も重なった。攻撃的なスタイルを貫く一方で、失点がかさんでいたのだ。いくら得点が多くてもそれ以上に失点すれば、白星からは遠ざかる。
20節・岐阜戦から34節・大分戦までの14試合で7分7敗と長いトンネルに入り、順位も2位から13位までダウン。35節の横浜FC戦でリーグ戦約3ヵ月ぶりの勝利を収めたとはいえ、この試合でも2失点を喫するなど、守備の不安定さは拭えなかった。
ここで霜田正浩監督が動きを見せる。久々の勝利にも浮かれることなく、次節の岐阜戦より3バックを本格導入し、ディフェンスの整備に力を注いだのだ。
3バックで戦った36節からの7試合(延期分の26節・町田ゼルビア戦含む)で4失点とその効果は数字に表れる。特にリベロで起用された大ベテランの坪井慶介は、落ち着き払ったプレーで安定感をもたらした。
3バック導入後はサイドアタックの破壊力こそやや低下したが、反面守備力は向上した。4バックに戻した最終節・アルビレックス新潟戦では攻守が噛み合い2-0と完勝を収め、良い形でシーズンを締めくくっている。
小野瀬の穴を埋める補強はもちろん、守備と攻撃のバランスを整えることができれば、来季のJ1昇格は現実味を帯びるはずだ。
■11位・徳島/特大のダメージも、“助っ人コンビ”が救世主に
今回取り上げた3クラブの中でも、今夏のメルカートで一番ダメージを受けたのが徳島である。大﨑玲央(ヴィッセル神戸)、山﨑凌吾(湘南ベルマーレ)、大本祐槻(V・ファーレン長崎)、島屋八徳(サガン鳥栖)と主力が4人も流出し、スタメンの見直しを強いられた。
更に主力の引き抜きという意味では、シーズン開幕前にサンフレッチェ広島へ移籍した渡大生の穴埋めも十分にできていなかった。昨季のJ2で得点ランク2位の23得点を奪ったエースを失った影響はやはり大きく、開幕から調子が今ひとつ上がらない要因となっていた。
この事態にフロントが動く。6月に日本でのプレー経験豊富なピーター・ウタカの獲得を発表し、7月にはスペイン2部のカディスよりベテランFWのダビド・バラルを補強。他にも名古屋グランパスより押谷祐樹、湘南ベルマーレより表原玄太とふたりのアタッカーを加え、巻き返しを図った。
文字通り救世主となったのが、ウタカ&バラルの“助っ人コンビ”だ。
2016年のJ1で得点王に輝いた前者は、新天地でも正確なポストプレーでタメを作り、フィニッシュでも能力の高さを発揮。中盤まで降りてのチャンスメイクでも頼りになった。
また、レアル・マドリーの下部組織出身としても知られる後者は、とにかくシュート技術の高さが群を抜いていた。29節の山形戦では加入後初ゴールを含む4得点を記録し、数字上のインパクトも十分だった。
ウタカは18試合で6ゴール、バラルは16試合で9ゴールと流石の活躍を見せた。年齢的にフル稼働は厳しいが、リカルド・ロドリゲス監督は交互に起用するなどコンディションの維持に気を配っている。ともに来季も残留して攻撃の中心を担って欲しいところだ。
20位・岐阜/“古橋ロス”に最後まで苛まれ……
徹底的にパスをつなぐポゼッションサッカーを軸に、独自路線を歩む岐阜。徐々に戦術の完成度を高めつつあるチームは、エースの古橋亨梧の大爆発(6試合連続ゴール)もあり、最高で7位まで浮上した。
しかし、絶対的な存在へと成長した古橋が8月頭にヴィッセル神戸へ移籍。結論から言えば、チームナンバーワンのシュート精度を誇るエースの流出が最後まで響き、20位フィニッシュの要因となった。
大木武監督は苦しい状況の中で試行錯誤を繰り返し、終盤戦で新たな布陣を導入した。従来のアンカーを置いた4-3-3からトップ下に風間宏矢、右ウイングに田中パウロ淳一、左ウイングに山岸祐也、CFにライアン・デ・フリースを据える4-2-1-3へのマイナーチェンジである。
従来の4-3-3ではアンカーの脇のスペースを使われたり、カウンターに対する備えが十分でなかったりするなど、守備に課題があった。ダブルボランチを採用することでカウンター対策を施し、加えてトップ下の風間がより自由にタクトを振れるようになり、デ・フリースをサポートできるようになった。
そして、ラスト7試合で3得点を奪ったデ・フリースには、来季の本格的な覚醒に期待したい。冷静なフィニッシュワークは古橋に通ずるものがあり、コンスタントにネットを揺らすことは可能だろう。
他にも田中&山岸の両ウイング、薮内健人、村田透馬ら期待の中堅・若手が成長し、結果を残せるようになれば、得点力向上は十分見込める。守護神・ビクトルを中心とした守備には改善が見られるだけに、攻撃陣の奮起が上位進出のカギを握るだろう。
2018/11/25 written by ロッシ