神戸市民はロケに慣れっこ? 東京は迷惑顔、大阪は集まり過ぎ

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神戸市内で行われた「フォルトゥナの瞳」の撮影風景(C)2019「フォルトゥナの瞳」製作委員会

 見慣れた風景がスクリーンの中で輝き、まるで違った表情に見える。「こんなにきれいな場所だったんだ」。この感動を大切に、神戸フィルムオフィス代表の松下麻理さんは神戸での映像撮影を支援してきた。

 阪神・淡路大震災の後、画面の中の神戸といえば、倒壊した高速道路や火災で焼かれた神戸市長田区の商店街。泣いているような景色ばかりだった。「元気になった神戸も見てもらいたい。それが復興の助けになれば、なおうれしい」と、西宮市出身の前代表、田中まこさんが中心となり、全国に先駆けて2000年に設立したのが、ロケ誘致と支援のための同オフィスだった。

 松下さんがバトンを引き継いだのは16年4月。「映画の規模、予算の多少にかかわらず、スタッフの希望をかなえるよう努力する」という姿勢を貫く。短時間で効率よく撮影するには「都会も田舎もある神戸が最適」と、製作側からも高い評価を得ている。

 リピーターが多い。「続・ALWAYS 三丁目の夕日」(07年)や「寄生獣」(14年)、「海賊とよばれた男」(16年)などのロケ先に神戸を選んだ山崎貴監督は、「歴史的建築物が美しい状態で残っている」ことを理由の一つに挙げていたそうだ。

 同様の組織が各地で誕生。ジャパン・フィルムコミッション近畿ブロックには賛助会員も含めて17年4月現在、26の組織が加盟する。「手つかずの海岸なら淡路島、時代劇なら姫路城でと、他地域とも協力する」

 そんな松下さんが現場で感じるのが「神戸市民の、撮影に対する適度な距離感」だという。

 東京でロケをしていると「邪魔だ」という顔をされることが多いと聞く。大阪だと「何やってるん?」とギャラリーが集まり過ぎて、さばくのが大変。神戸は「つかず離れず、ちょうどいい」のだ。

 約1万人のボランティアを抱え、エキストラや美術制作などに協力する「神戸フィルムオフィスサポーター」も心得ている。エキストラ経験者に「思い出は?」と尋ねると、有名俳優との“共演”よりも、「映画がこんな風に作られているのだと分かった」と喜ぶ声の方が多い。参加することでより映画が好きになり、観客としても映画産業を支えてくれる。

 今年5、6月、神戸市内の約20カ所でロケを行った映画「フォルトゥナの瞳」が来年2月に公開される。主演は神木隆之介さんと伊丹市出身の有村架純さん。死期の近い人間が透けて見える力を備えていることに気付いた男性が一人の女性と出会い、愛し合うことで自身の進むべき道を見いだす、という物語だ。

 海を望む垂水区塩屋町9の坂道、明石海峡大橋が見える舞子公園、ポートアイランドの市民広場、ハーバーランド・レンガ倉庫南側のハーバーウォークなど、市民にはなじみ深い風景が次々と登場する。

 能年玲奈(のん)さん=兵庫県神河町出身=主演の「ホットロード」などで知られる三木孝浩監督は「特に塩屋の坂道が気に入ったみたい」と松下さん。

 「何の変哲もない風景」が絵になる-。そんな神戸の魅力をこれからも見つけていきたいという。(片岡達美)