スバル 新型XV e-BOXER試乗|実用性と楽しさを併せ持つ買い得なクルマ

スバル 新型XV e-BOXER ボディカラー:クールグレーカーキ

マイナーチェンジで新型XVにe-BOXERが登場

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今の自動車メーカーは海外市場を重視して、日本国内では新型車の発売が滞りがちだ。その中で2018年に発売された注目車に、SUVのスバル フォレスターがあった。水平対向エンジンに4WDを組み合わせる手法は従来と同じだが、「e-BOXER」と呼ばれるハイブリッドを新たに採用した。

そして新型フォレスターの発売後に、同じスバルのXVがマイナーチェンジを受けてe-BOXERを搭載している。そこでこのシステムを搭載したアドバンスを試乗してみたい。

モーターは非力でもスバルらしい自然な運転感覚

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新型フォレスターと違って新型XVでは、先代型からハイブリッドが搭載されていた。基本的なメカニズムは現行型も共通で、CVT(無段変速AT)に1個の駆動用モーターを組み合わせる。モーターの最高出力は13.6馬力、最大トルクは6.6kg-mとされ、この数値も先代型と等しい。

そして減速時には、駆動用モーターが減速エネルギーを使って発電を行い、駆動用電池に充電する。この電池は進化しており、先代型はニッケル水素だったが、現行型では充放電効率の優れたリチウムイオンになった。

駆動用電池が十分に充電された状態であれば、発進はエンジンを停止させてモーターだけで行う。ただし前述のようにモーターの駆動力が小さいため、エンジンを停止させた状態で速度を高めることはない。駆動の主役はエンジンで、負荷が少し高まると始動する。

ハイブリッドらしさが乏しいともいえるが、スバルらしさでもあるだろう。例えばトヨタのハイブリッドでは、電気自動車風に速度が直線的に高まるが、エンジンが始動すると加速感が変化してしまう。

ホンダのスポーツハイブリッドi-MMDでは、駆動はモーターが中心でエンジンは主に発電機の作動に使われるから、速度とエンジン回転数の増減が一致しない場面もある。

いずれもドライバーによっては違和感と受け取られるが、e-BOXERでは非力な分だけモーター駆動が脇役に徹するため、自然な感覚で運転できる。

エンジンが本領を発揮するまでモーターがカバー

スバル 新型XV e-BOXER ボディカラー:クールグレーカーキ

モーター駆動のメリットは、アクセル操作に機敏に反応して出力を高めることだ。エンジン回転が下がった状態で巡航中、アクセルペダルを緩く踏み増すと、モーターの駆動力が先行して高まり速度を滑らかに上昇させる。

ただしe-BOXERでは、エンジンを停止させてモーターのみで走っている時、アクセルペダルを少しラフに踏み込むと、エンジンの再始動で唐突なショックを感じることがあった。この制御はもう少し滑らかにしたい。

モーターが非力だから、エンジン回転が高まるとその効果は薄れるが、水平対向4気筒2リッターエンジンの吹き上がりが活発で、3500回転前後から速度上昇が力強くなる。

つまり比較的低い回転域では、モーターがエンジンの駆動力を支援して、回転が高まるとエンジンの本領が発揮されるわけだ。性能的には平凡だが、低回転域から高回転域までモーター駆動を含めてまとまりが良い。

自然なハンドリングと優れた安定性を両立するが乗り心地は要確認

スバル 新型XV e-BOXER ボディカラー:クールグレーカーキ
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似たことが走行安定性にも当てはまる。XVはインプレッサスポーツをベースに開発されたSUVで、駆動方式は4WDのみだ。最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)は200mmを確保するから、悪路のデコボコを乗り越えやすい代わりに重心も少し高い。

さらにコンパクトながらもモーター、駆動用リチウムイオン電池、制御機能を備えるから、車両重量は1550kgに達した。2.0i-Sアイサイトに比べると110kg重い。

高重心でボディが重ければ、カーブを曲がったり車線変更をする時の挙動で不利になるが、XVアドバンスは上手にバランスを取った。操舵に対する反応は鈍さを抑え、車両の向きを適度に変えやすい。

しかも、下り坂のカーブを曲がっている最中にブレーキングを強いられるような場面でも、後輪の接地性が損なわれにくい。一般的に高重心でボディの重い車種では、曲がる性能を下げて安定性を高めることが多いが、XVアドバンスはそのような設定になっていない。自然に曲がる性能と安定性を両立させた。

注意したいのは乗り心地だ。タイヤサイズを18インチ(225/55 R18)にしたこともあり、時速50km以下で街中を走ると、少し硬く感じる。大きめの段差を通過した時の突き上げは抑えたが、路上のザラザラした感触を伝えやすい。硬いと感じるか、許容できるか微妙なところだから、購入時には販売店の試乗車で乗り心地を確認したい。

燃費性能も平凡だが経済性は◎

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XVアドバンスのJC08モード燃費は19.2km/L、WLTCモード燃費は15km-Lだ。ホンダ CR-Vハイブリッドの4WDはJC08モード燃費が25km/L、トヨタ ハリアーハイブリッドは21.4km/Lになり、XVアドバンスのe-BOXERは動力性能の割に燃費数値が良くないが、その代わり販売価格が安い。

XVアドバンスは282万9600円で、同等の装備を採用したノーマルエンジンの2.0i-Sアイサイトと比べると、12万9600円の上乗せに抑えた。エコカー減税の違いに基づく税額の差も加味すると、e-BOXERの価格は実質10万円弱に抑えられる。

そうなるとJC08モード燃費がノーマルエンジンに比べて3.2km/Lしか向上しなくても、燃料代の節約により、5万km前後を走れば10万円弱の実質差額を取り戻せる。ハイブリッドの中でも割安だ。

クルマとしての性能を高水準でバランス

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しかも新型XVはインプレッサスポーツがベースだから、SUVとしてはボディがコンパクトで運転しやすく、居住空間には余裕がある。後席の足元空間はLサイズセダン並みだから、4名で乗車しても快適だ。

安全装備も充実しており、緊急自動ブレーキを作動できるアイサイトは、歩行者や自転車も検知できる。ボディの後方に向けた音波センサーも新たに備わり、ゆっくりと後退している時に障害物を検知すると、警報を発して緊急自動ブレーキも作動させる。

オプションではドライバーの死角に入る後方の並走車両などを検知して知らせる機能も選べる。セットオプションでサイドビューモニターも用意された。

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XVアドバンスの価格帯には、ミニバンの日産 セレナハイウェイスターVセレクション、トヨタ ヴォクシーハイブリッドXなどが用意される。今は安全装備の充実や環境性能の向上でクルマの価格が高まったから、260〜300万円がファミリーユーザーを対象にしたミドルサイズカーの売れ筋価格帯になった。

その中で新型XVアドバンスは、走行性能、燃費、安全装備、居住性など、さまざまな機能を高水準でバランスさせている。実用性と運転する楽しさを併せ持つ買い得なクルマに仕上げた。

[筆者:渡辺 陽一郎 撮影:小林岳夫]

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