いくつかの共通点

 国民1人当たり1万2千円で、高齢層などには上乗せもあった。どう使ったか、ご記憶だろうか。白状すると筆者はまるで思い出せない。2009年、時の首相は麻生太郎氏。政府は総額2兆円もの「定額給付金」を国民に配った▲麻生氏は当初、これを低所得者への「生活補助」と言い、金持ちが受け取るのは「さもしい」と言い、やがて、国民みんなで「盛大に使ってほしい」と言って、発言がぐらぐら揺れた▲と、9年前のことを持ち出すのも何だが、いま政府が示す「消費税率引き上げに向けた景気対策」に、定額給付金をめぐる騒動をつい重ねてしまう▲共通点がいくつかある。一つ、「ばらまき」と評判が芳しくない。世論調査では、給付金を7割が評価せず、いま政府が打ち出している「キャッシュレス決済へのポイント還元」は6割が反対している▲もう一つ、ともに本末転倒にも見える。定額給付金はあんなに税金がつぎ込まれた割に、経済効果の程は疑わしかった。いま打ち出されている景気対策にも批判がある。過剰にやると「増税分を食いつぶし、元も子もない」と▲さらにもう一つ、どちらも真の狙いは「選挙対策」とみられる。増税分の使い道よりも、大盤振る舞いの方が冗舌に語られている。何のための増税なのか、すっかり脇に置かれていまいか。(徹)

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