NGOが金融機関の「炭素フットプリント」を比較調査

各金融機関の保有銘柄の割当GHG排出量(CO2換算トン/年)

銀行などの社会性格付けサイト「フェアファイナンスガイドジャパン」で、NGOらは金融機関の投融資を通じた炭素排出を見える化する「炭素フットプリント」の比較調査レポートを公開した。保有銘柄の温室効果ガス(GHG)排出量が多かったのは、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)や三菱UFJフィナンシャル・グループ。NGOらは「調査方法に課題はあるが、どの金融機関が気候変動にフレンドリーか比較するための第一歩の調査」と述べている。(辻陽一郎)

同レポートでは日本の主要16金融機関を対象に、国内株式ポートフォリオ(GHG排出量上位50銘柄)における炭素フットプリントを計算。保有銘柄の割当GHG排出量(CO2換算トン/年)の上位は上述の通りだが、この値では資産運用額が大きいほど排出量も多くなってしまう傾向にある。そのため、各金融機関の総資産額で補正した値の結果も示している。資産額補正後のGHG排出量(CO2換算トン/10億円)での上位はGPIF、日本生命保険、三井住友トラスト・ホールディングスとなった。

昨年6月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が気候変動に関わる情報開示の提言を発表して以降、気候変動リスク情報の開示に国内外の企業が取り組み始めている。国内では35の企業が提言への賛同を表明している。

開示が進む一方で、比較ができない現状をレポートでは指摘する。「各金融機関は、統一した方法論に基づいて投融資ポートフォリオの炭素フットプリントを比較可能な形で開示するべき」という。

11月21日に開いたセミナーで「環境・持続社会」研究センター(JACSES)プログラムディレクターの田辺有輝氏は「開示だけでなく下げていく努力も必要だ」と話した。「各金融機関には、投資先企業への働きかけや銘柄の入れ替えなどを通じて自身の投融資ポートフォリオの炭素フットプリントを削減する取り組みを進めるべき」と提言する。

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